ばーさーかー・ぷりんせす!
1.
質素だが品の良いドレスをまとい、少女は荒野に立った。馬車がようやく通れる
程度の道をそれでもドレスで闊歩する。17〜18歳くらいだろうか。白く艶やかな
肌、豪奢な金髪は腰まで伸びている。何より人形のように美しく整った顔立ちに青
い瞳は意志の強さに輝いていた。
「ふう、ようやくですわ。じい、用意はよくて?」
涼やかで優美な声が吹きすさぶ風に抗うように響く。
「もちろんでございますとも、姫。」
一抱えの荷物を軽々と抱え、執事然とした老人、ギャリソンは答えた。70歳は越
えていようか、しかしその立ち振る舞いに老いは見えない。少女は優雅にうなずく
と、今度は埃を払いながら怒声をあげた。
「何をもたもたしているのです、下郎!」
遅れて素っ頓狂な声が届く。
「へ、へ〜い。今いきまーす」
よたよたと小山が動いてきた。よく見ればそれは巨大な鞄。ただし運んでいるのは
痩せぎすの男ひとり、である。
「いやあ、姫のお手伝いが出来るなんて、らっきーですよぉ、ぜぇぜぇ」
脂汗を浮かべながら、荷物運びの従者ラッキーはにやにや笑っていた。
「きゃははは、ラッキー、へんな顔ー♪」
ちょこんと、後からやって来たのは魔法使いの衣装をした黒髪の女の子だ。悪戯っ
ぽいエメラルド色の瞳。
「るせーなマリア。○○○ぞコラ」
マリアに続いてシスター姿の少女、ルーシーが現れた。おっとりした口調、仕草。
とび色の瞳に朗らかな笑顔。
「姫さま〜、ラッキーがぁ、へんな言葉つかってます〜」
ドゴン!
言うより早く王女のドレスから強烈な回し蹴りがラッキーの鳩尾にヒットする。
「ぐぉぼ! …が、は、失礼しましたあ」
しかしながら彼は思った。
(…すらりとした美脚が見えてらっきぃ〜♪)
作品名:ばーさーかー・ぷりんせす! 作家名:JIN