DIVISION GRAFFITI -境界の落書-
青年との言いあいのあと、葬式場に戻ってきたメイを周りの人たちは、根掘り葉掘り問い詰め始めた。
――――今までどこに行ってたの? 心配したんだから。
「すみません、ちょっと気分転換に散歩してたんです」
――――辛いでしょうけど、私たちでよければいくらでも聞くわよ、大丈夫?
「はい、大丈夫です。本当に心配かけてすみませんでした」
――――本当に? 本当に無理してない?
「してません」メイはかぶりを振った。「もう気持ちの整理はできてますから」
ショートヘアーの女性は眉をひそめて『そう』というと、『でも、辛くなったらいつでも言ってね』と言い残してその場を去っていった。
薄情だとか思ってるんだろうな。
メイはその足で、母のソメナの墓まで立ち寄った。
風がいやに心地いい。まだ真新しい芝生が風で舞い上がる。それにつられて、メイのウェーブがかった金髪と、黒いワンピースも一緒に翻(ひるがえ)った。
足元にはまだ真新しい墓標があるだけ。
「――――お母さん、やっぱり・・・・・・無理よ。除霊師を継ぐなんて」
墓石からの返事はもちろんない。もしここであったとしたら、それこそ彼女の出番になってしまう。
「私にあるものって言ったら少しの眼力と、お母さん譲りのこのうっとうしいテンパぐらいじゃない。そんな私にどうしろと・・・・・・・」
メイが墓石に手を伸ばしかけたその時、風に乗って聞き覚えのある声がメイまで届いてきた。
この声は・・・・・・たしかさっきの――――。
「おーい! そこの娘ー!」
――――やっぱりそうだ。
作品名:DIVISION GRAFFITI -境界の落書- 作家名:春 ゆみ