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DIVISION GRAFFITI -境界の落書-

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 ビタン!!!

 
 メイは差し出された手をさらりと無視して青年の胸蔵をつかむと、今度は綺麗に一本背負いを決め返した。
 立場が一瞬にして逆になる。
 青年は自分とほぼ同じぐらいの年齢に見えた。メイは上から見下ろす形で、あきれ顔の青年を嘲笑った。
 「・・・・・・普通そこ投げ返すか? いや、確かにわしも悪かったがな、いやでもそこは・・・・・・」
 ――――『わし』? 
 「・・・・・・初対面花の17歳の乙女の胸蔵つかんで、出会いざま背負い投げ一本決めた人に言われたくないわよ」変わった人だと思いながら、メイはくるりと踵を返した。
 「失礼したわね」
 振り返りもせず、半ば走るようにして去っていくメイを、青年はポカンと見送った。
 「なんだ? あの娘・・・・・・」ふと目の前を見ると、少女の所持品らしき箱が転がっていた。細かいところまで装飾が施されており、それが質のいいものだということは一目瞭然だった。
 青年はそれをそっと持つ。

 「・・・・・・追いかけねばならんか、やれやれ」

 どんな娘だったかな、顔を思い出してみる。
 ウェーブのかかった金髪と、透き通るような碧眼を持った少女。確か黒いドレスを着ていた。あれは恐らく、葬式用。あの顔、どこかで見覚えが・・・・・・。

 しばらく考えてはみたが、どうにも思い出せない。

 青年は辺りを見回した。
 「そうだ、さっきからどうもこの街並みは懐かしくかんじられて・・・・・・」

 ふと横の壁を見る。ひび割れたり、下の方に苔が生えたりと、なかなか年季が入った建物なのだが、そこに貼りついているチラシは、まだ真新しかった。

 最近新しくオープンした『占い屋』の宣伝。下の方には店の住所が書かれている。
 自分が今、『ミロアクス』という国にいる事だけは分かっていた。その都市であるセントラルからは徒歩――――1か月、といったところか。
 馬車に乗れば、1週間ほどで行けない事もない。

 だが、そのチラシがここに貼ってあると言う事は、自分が今いるこの場所は、その店に比較的近い場所だ、という事だ。

 「ミロアクス国 セントラル東方 ・・・・・・イロニト」
 ――――イロニト?

 「・・・・・・あっ!!」その時、青年のなかの記憶が一気によみがえった。その中の一つが、少女の顔とぴったり合致する。たしかあれは20年ほど前、記憶も薄れるわけだ。

 青年は確信した。慌てて立ち上がると、急いで少女の後を追う。こんなとこで座り込んでいる場合ではないであろうが!

 「あの娘、もしかして奴の・・・・・・!」