ドール ノーカット差分
エピローグ
医者があわただしく廊下を駆け抜けて行く。
口々に何かを叫びながら。
その内容から患者の誰かが亡くなったことが分かる。
「よくやったね」
ワシは英ちゃんの宝物であるピーター人形を抱きながら廊下を歩く。
かわいそうな英ちゃん。
あの幼さで不治の病に倒れ、自分の運命を呪い続けながら亡くなってしまったかわいそうな英ちゃん。
病のために自由を奪われ、他の子供たちを羨んでいた英ちゃん。
その気持ちはいつしか憎しみへと変わっていき、ピーター人形に宿った。
英ちゃんは死してなお自由を得られなかったのだ。
そんな英ちゃんが望むことはただ一つ。
他の子供の笑顔を自分と同じように奪うこと。
その子の家族を自分の家族と同じくらい哀しませること。
ああ哀れな英ちゃん。
おじいちゃんだけはずっと英ちゃんの味方だよ。
ワシは英ちゃんの手を握った。
「さあ、行こうか」
英ちゃんはうなづいてワシに続いて歩き出す。
「次は誰にする?」
英ちゃんが尋ねる。
「さあて、誰にしようかね」
ワシはいつまでも英ちゃんを助ける。
英ちゃんが満足するその日まで。
作品名:ドール ノーカット差分 作家名:逢坂愛発