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闇の診殺医・霧崎ひかる

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karute-4  「腕」


1.

「お、お願いです。彼女を助けてください!」

 そう叫び、蒼白な顔で青年は部屋に入ってきた。肩まで伸ばした茶髪、端正
な輪郭に涼しげな目元。品のよさそうな白いシャツを…
赤く血で汚して。

「あら、急患かしら。よくここまで来れたこと」
薄暗がりの部屋で、女医は囁くように言った。妖艶に微笑む真紅の唇。ドアに
は「診察室」とだけ書かれている。
シンプルな黒のワンピースに白衣を無造作にかけている。深めに切れた胸元や
腕からも引き締まった美しい陶磁のような肉体が見てとれる。なびく長髪。黒
く輝く瞳。

「ふうん。それで、彼女って…それ?」
「な、なに言ってるんですか。もちろんですよ。彼女以外に誰がいるんです!」

神経質そうに眉を吊り上げ男は叫ぶ。彼がかき抱いているのは―――

 引きちぎられた、白い、女性の右腕だった。

作品名:闇の診殺医・霧崎ひかる 作家名:JIN