サイコシリアル [2]
「涙雫君、いや、愚鈍者、そこに座りなさい」
戯贈は無表情の中に沢山の感情を隠し、僕に言った。
「はい」
勿論、僕はそれに応じる。
時と場所は変わり、涙雫家。僕の部屋。部屋には僕も含めて、二人。女の子と
初めての二人きりインマイルーム、バット、修羅場。
斬島との事件も無事(?)に終り、今、僕には第二の死亡フラグが立っていた
。
「何故、自己の判断で行動を取ったの?」
戯贈は、僕の目を真っ直ぐ見据え、言った。
「いや、ちょっと感情的になってしまいまして」
戯贈の迫力、というかプレッシャーに気圧されて敬語になる僕だった。
「感情的━━とても人間的ね。素晴らしいわ。けれども、相手は人間ならぬ、
そうね、野獣みたいな奴よ。理性の何もかもがかけた野獣。いや、野獣よりも厄
介だわ。斬島はどちらかと言えば、捕食者ね。そんな奴を目の前にして感情的に
行動を取るなんて、本当に愚鈍よ。惨めですらあるわ。だいたい、あなたは運が
良かったからこの場にいれるけど、斬島が『威勢がいい』生き物が大好きじゃな
かったら、あなたは死んでいるのよ。しかも、あなただけじゃない。支那ちゃん
もね。これは中立的な意見ではないのだけれど、とても人間的な意見なのだけれ
ど、あそこで、あなたが死んだら支那ちゃんは一生トラウマを抱えるはめになっ
たのよ」
「ごめんなさい」
「『ごめんなさい』とてもいい響きよね。尚且つ、不愉快な単語でもあるわ。
『ごめんなさい』と言えば、万事解決とはならないでしょ?」
「でも……」
「でもまぁ、終わったことだから、しょうがないのだけれども」
戯贈は怒っているというよりも呆れていると言った感じであった。
「本当に心配したのよ」
戯贈は、小さな声で呟いた。
これは何フラグだ?
死亡フラグが何フラグに変わったんだ?
「私はね、あなたといるのが楽しいの。たった数日間しか共に過ごしていない
のだけれども、私の心はね、あなたのことがとても気に入ったみたいなの」
え? え? え?
マジでどんな状況なの、これ。
作品名:サイコシリアル [2] 作家名:たし