サイコシリアル [2]
「斬島・・・・・・何故、人殺しをするんだ?」
「何故か・・・・・・愚問だヨ。それじゃ、お前は、何故息をしているんだい?」
「・・・・・・息をしないと生きていけないから・・・・・・だろ?」
「同じだよ、小僧。俺にとって殺人は息をするのと同じことなんだヨ。美少女がいれば殺す、存在する意義がないから。だから、俺は殺すんだヨ。とてもいいことをしているんだヨ、俺は」
斬島はそれこそ、息をするかのように平然と言った。
『殺す』ということは、『息』をすることと一緒だと。
言い換えれば、僕の妹を息をするかのように殺す、と。
「どうやれば相手が苦しむか考えるだけで疼くじゃないか。相手の苦しみが俺の心を安らげる。本当に、次々と苦しませる方法が浮かんできて大変なんだ。そうだよ、俺が一番大変なんだ」
僕は、前に戯贈に言われたことを思い出していた。
殺されてもいい人間なんていると思う━━と。僕はその時『いない』と答えた。
今なら言える。即答できる。
考えなくても分かる。
殺されてもいい人間、それが今目の前にいるのだから。
『涙雫君、いい? 相手の話を聞いちゃダメよ。殺人犯に慣れていないあなたなら尚更ね。決してダメよ。涙雫君の理性まで消えてしまうから』
戯贈は僕の心情を知ってか知らないでか、的確なタイミングで言ってきた。
だけど、だけど━━
「僕にも限界があるよ、戯贈」
僕は小声でそう返す。声は、怒りで震えていた。憤怒以外の何物も含まれない、声で。
『あなたは馬鹿なの? 死ぬわよ、本当に。あなたが死んだら元も子もないでしょう』
戯贈の声は心なしか焦っているようだった。
最悪の事態への予感に。
「あぁ、そうだ。今度は幼稚園に行こう。美少女に拘らなくてもいいんだ。何十もの赤い噴水が見れるヨ。とても綺麗だろうネ。だって、あの頭が首から斬り裂かれたあの、鮮血の迸る音が悦楽を感じさせてくれるだろう。はぁ、逝ってしまいそうだヨ」
━━ごめん、戯贈、限界だ。
俺はそう呟き、キレた。
「斬島ぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」
『ダメよ! 本当に死ぬ気なの?』
耳元で戯贈が叫んではいたが、止まらない。
けど、戯贈が叫ぶということは余程のことなのだろう。
でも、止まらないんだ。もう、戯贈の声は聞こえない。
僕は右耳のイヤホンを取り、捨てた。
作品名:サイコシリアル [2] 作家名:たし