サイコシリアル [2]
「なぁ、九紫。美人の内臓だけを取って殺す犯人ってどう思う?」
色々考えてもきりがない。今は目の前の事を片付けよう。
僕はそう思い、九紫に今回の事件の説明を行った。
「━━美人ばかり狙う、それも一級の美人ですか。犯行手口は、内臓を取る。
これまた奇妙な殺し方をする犯人ですね」
九紫は、僕の話を聞き終え、思案顔となりながらも話を始めた。
「まず、犯人は男、と断定するのはまだ早いでしょうね。女性にだって美人を狙う理由があります。美人に対する、妬みとか憎悪とかですかね。問題は犯行手口ですね。何故、美人の内臓を狙うのか━━━その理由。ただの妬みや憎悪なら、内臓を狙う必要もありませんしね」
僕もここまでの結論には至っていた。
ここから先の謎が全くもって見当も予想も仮定もすることが出来ないのだ。
犯人の気持ちになっても、まるで分からない。
内臓を狙う理由が見つからない。
「事件の頻度からして、もうそろそろ犯行が行われるだろ? 次の被害者を予測して、張り付いていれば犯人に辿り着くかな、とも思ったんだけどさ」
けど、被害者の予測なんて出来ない。美人なんて数え切れない程いる。
「犯人は一級の美人を狙っているんでしたよね?」
「そうだけど」
「いるじゃないですか、涙雫先輩。一級すらも越える超ド級の美人が。私なら確実に狙いますけどね」
「あっ・・・・・・」
忘れていた。
見逃していた。
身近にいる超ド級の美人の存在を。
「霞ヶ窪 桜」
現役モデルにして次世代を担う美人の存在を。
「正解です、涙雫正解」
犯人は必ず霞ヶ窪を狙いに来る。
根拠はないが、確信が持てる。
超人の中の超人が揃う、朧気高校一の美人。
犯人が狙わないはずがない。
「私は野暮用があるので、お手伝いすることは出来ませんが、健闘を祈っています」
「十分だよ、九紫。頭が悪い僕に、お前は重要なヒントを与えてくれたんだからな」
霞ヶ窪が狙われる━━そんな薄っぺらな希望に願いをかけ、僕と九紫は遅刻確定の学校へ一歩踏み出した瞬間だった。
作品名:サイコシリアル [2] 作家名:たし