サイコシリアル [2]
「冗談はさておき、戯贈先輩に呼び出されたのは他でもない、あなたのことでですよ、涙雫先輩」
「僕のこと?」
はて。
戯贈が僕のことで九紫を呼び出す理由が見つからない。僕が気づいていないだけで、戯贈に何かしてしまったのだろうか。
どちらかと言えば、考えれば考えるだけ、不吉な予感しかしない。不吉というよも不快な感じだな。むしろ、怖い。
「はい。昨日、何を話していたのか事細かに聞かれました。そして、包み隠さず話しました。それはもう、二人だけの秘密と約束したあのことまで」
「最後の方の言葉は流させてもらう。相手にしてらんねーからな」
「二人だけの秘蜜」
「やめろ! お願いだから! このままだと下ネタキャラ定着するぞ!」
というか下ネタキャラなんかじゃない。
どちらかと言わず、変態キャラ確定だ。断定してもいい、確信を持って言える。
こいつは変態を体現したやつだ。
変態と変人の間を紙一重で遊んで嫌がる。
「ともかく涙雫先輩との会話の内容を聞かれたんですよ。最初から最後まで無表情を貫き通していたので、とても恐怖しましたよ」
「何故だろうな」
というか、戯贈は基本的には無表情を崩さないから、最初から最後まで無表情というのは普通じゃないのか。
はたまた九紫の前では表情豊かな女の子なのだろうか。
実に想像し難いな。
「何故でしょうね」
九紫も僕と共に思案顔へと移り変わる。
「恋でしょうか」
「それはないな」
確実にないと思う。戯贈には恋愛感情が欠けている気がする。
「何故そう言い切れるんですか?」
「だって戯贈には、恋心というものが、微塵も感じられないぞ?」
「恋心というのは、内に秘めているものですよ、涙雫さん」
「そうは言ってもな、戯贈に恋心か。いまいちピンと来ないな」
もし、何かしらの人間的感情があるのだとしたら。
戯贈が持っているのは優しさだろう。
戯贈は、何だかんだ言って優しい人間だと思うから。
「もしくは、嫉妬ですかね」
九紫が言った。
作品名:サイコシリアル [2] 作家名:たし