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ひとつの桜の花ひとつ

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「いいですよ、無理しなくたって・・もちろん直美さんのほうが似合ってたでしょうから・・」
「そりゃ、そうよねー でも、かわいいよねー夕子も」
こっちを見ながらの直美が笑っていた。
「さっ、用意できたの・・俺はとっくになんだけど・・」
「わたしもだよ、夕子ちゃんもいいの・・忘れ物ないかな・・」
「はぃ、もういつでも、いいですよ」
いよいよって感じだった。
「じゃぁ、行こうかぁ・・おかーさんはなんか言ってた・・」
短い電話だったけど、少し気になっていた。
「どっちでも、すぐに電話しなさいって・・言われただけですよ、それから、直美さんに迷惑かけないようにって・・」
「あれ、俺には・・」
「いっしょの部屋で寝たなんて知らないし・・」
「そうよねー 知ってたら泊めてくれないもんねー」
直美が夕子の顔を覗き込んでいた。
「どうですかねー、 直美さんも一緒なら平気だと思うけど・・うちのおかーさん・・」
「おっ 評判いいみたいですよ、劉・・」
「いいから、いくぞ、もう、9時過ぎてるし・・」
時計を見ながらだった。
「はーい、なんか、けっこう怒ったりしますね・・」
「あっ きっとわざとだよ、夕子ちゃんいるからだね・・」
「へー」
玄関に歩きながら 言われ放題だった。

「あっー 青空きれいだなぁー 暖かいですよ、今日って・・たしかに晴れ男みたいですね」
「ねっ、そうでしょ」
「はぃ」
昨日の夜の話のようだった。
それから、世田谷線に乗ろうかって言ったら、夕子が歩きたいっていうから、世田谷線沿いの道を豪徳寺の駅に向かって3人で歩いていた。
「思い出したー」
「なに、いきなり、直美」
「すごい事思い出しちゃったぁ」
歩きながら、めずらしく大きな声を急に出していた。
「だから、なによ」
「夕子ちゃん、そのマフラーって、わたし、合格発表の時にしてた・・うん、思い出した、いいかも、うん」
「えっー そうなんですかぁー うれしいなぁー」
うれしそうにマフラーを顔にまでいっぱいに巻きながらだった。
「なんか・・いい匂い」
すごく笑顔の夕子になっていた。直美と俺を心配させないようにって昨日から明るくしてるんだろうけど、この笑顔は本物だろうなーって、俺も笑顔で夕子を見ていた。直美もきっと同じ思いのはずだった。
マフラーは 今、とっても夕子に似合っていた。


作品名:ひとつの桜の花ひとつ 作家名:森脇劉生