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ひとつの桜の花ひとつ

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願いの朝の


「寒むいねー 大丈夫か、直美・・」
「うん、着込んできたから・・でも、寒いねー」
直美と近所の世田谷八幡宮の境内を歩いていた。
「でもさー 来たのはいいけど、八幡宮って基本的には 戦の神様だよなぁー 」
「そうなの・・・知らなかった・・」
「武将が 戦の前に必ず拝む神社だな・・」
「ふーん、でもさ、受験も戦でしょ、現代の・・そう考えればご利益あるかもよー 」
「うん、そうそう、ま、こうなりゃ安産の神様だろうが、交通安全の神様さろうが・・なんでも拝んじゃうわ」
「そこまで 言わないけど・・これだけ立派な神殿なんだからご利益あるんじゃない」
たしかに、初めて見たときからこんな場所にって思うほど立派な神社と境内だった。
「夕子ちゃん、起きちゃったかなぁ・・まだかなぁ・・」
「手紙置いてきたんでしょ」
「だって、起きてわたしも、劉もいなかったらびっくりするでしょ・・急に言い出すから、あわてちゃったわよ、見つからなかったいけないから3枚も置手紙書いてきちゃった」
「なら、平気かなぁ」
「でも、早く帰ってあげようよ、お腹すいちゃってるかもしれないしね」
「うん、さぁ 拝もうか・・」
社殿の前にたどり着いていた。
「鈴って、最初に鳴るすの・・」
「どうなんだろー こっちですよーって呼ぶのかなぁ・・」
「いいや、鳴らしちゃおうっと」
直美が鈴を大きく振って、静かな朝の神社の境内に大きな音が響きだしていた。
2回礼をきちんとして、かしわ手も2回して、お祈りをあげて、もう1礼だった。
「劉、きちんと お祈りできた・・」
「したって、敬語つかってお願いしたぞ、俺」
「当たり前でしょ・・」
「これで、なんか少し 楽になったかも・・」
「以外だよねー なんか」
「自分のことなら、こんなんじゃないんだけどなぁ・・なんでだろう」
「そうねー わたしもだけど・・でも、劉は昨日さっさと寝ちゃったじゃない」
「うーん、寝れないかと思ったんだけど、酔っ払ってたみたい、ずーっと話してたでしょ・・」
「そうでもないよ、劉が足を蹴飛ばして、静かになってから、すぐ夕子ちゃんもわたしも寝ちゃったから」
「そうかぁ」
「うん、さ、早く帰っておいしい朝ごはんを夕子に食べさせなきゃ」
赤い鳥居をくぐって小さな階段を降りながらだった。
「南無八幡大菩薩さま・・」
「なにそれ、劉・・」
「昔みたドラマで織田信長が神社出る時に言ってたようなきがしたから・・」
「おかしいよねー たまに・・」
階段を降り終わって直美に不思議な顔して笑われていた。

「まだ、寝てるかなぁ」
「どうだろう、起きてるかもよ、夕子ちゃん」
寝てるといけなかったから玄関の鍵をなるべく静かに回していた。
「どこいってたんですかぁー お散歩ねってメモ紙置かれてもさっぱりなんですけどー」
ドアを静かに開けたのに、大きな声の夕子に迎えられていた。
「ごめんねー 夕子ちゃんぐっすり寝てたし、劉は言い出したら止まんないし・・」
「どこ行ってたんですかー 2人で、朝早くから・・」
「そこまでよ・・・早起きしちゃったからね」
笑顔の直美だったけど、神社に行ったのは内緒にするようだった。
「あれー 夕子ちゃん朝ごはんつくってるんだ、大丈夫なの」
「おいしいお味噌汁が今できますよ、柏倉さん」
鍋がガスコンロの上で湯気を出していた。
「じゃぁ、夕子ちゃん一緒につくろうか・・劉は、お布団横にたたんで、テーブルきちんと移動しといてね」
言いながら、冷蔵庫の中をあけて、直美は玉子をだしているようだった。
「布団をたたんだら どうすればいいかなぁ」
「劉は、だまって 待っててください」
「はぃ」
返事をしながら、ほこりが舞わないように静かに布団をたたんで部屋の隅にだった。
すぐにお腹が鳴りそうないい香りが部屋いっぱいにだった。

「できたよー お味噌汁と焼き魚が、夕子ちゃんで、卵焼きはわたしね」
「お魚は焼いただけですから・・でも、お味噌汁はきちんと作りましたよ」
「味見しけど おいしいよ」
直美がにっこりだった。
「では、いただきまーす」
直美も夕子もいっしょに続いていた。
「直美さん、これって、おいしいけど、なんのお魚ですか・・」
「あこう鯛の粕漬けだね、ふっくらちょうど良く焼けてるね」
たしかに柔らかくふっくらでおいしかった。
「柏倉さん、お味噌汁飲んでくださいよー」
「うん、お豆腐とわかめですかね」
「そうですよー、おいしいかなぁ・・あのう、柏倉さんところのお味噌って、なんで大きな樽であるんですかぁ、びっくりしちゃった」
「びっくりでしょ、わたしも最初驚いちゃったんだから」
直美も最初びっくりしていたお味噌だった。
「それさ、田舎の近所のお味噌屋さんのなんだよね、それって子供の時からだから、なんか他のお味噌もたしかにまずくは無いんだけど、落ち着かないんだよねー それじゃないと・・」
「そうなんですかー でも、おいしいですね」
お椀にから口を離して、俺の顔をみながらだった。
「うん、ちょうどいいね、夕子ちゃん、おいしいよ」
直美もおいしそうにお味噌汁を口にしていた。
「卵焼きも、おいしい・・」
「それは、上手なのよ昔から、わたしって、ね、劉、そうでしょ」
「うん、朝はこれいいよねー」
いつものおいしい、卵焼きだった。
「何時にでようか・・1時間かからないよね」
時間は8時だった。
「うん、かからないけど、どうする夕子ちゃん、9時にここを出ていこうか・・」
直美の大学だったけど、たぶん歩くのをいれても50分もあれば充分だった。
「時間は、そんなに10時を気にしなくってもいいです・・遅刻ってわけじゃないし・・」
「でも、10時ごろには学校の近くがいいよ、夕子ちゃんのおかーさんも、おとーさんも、連絡待ってるよ」
直美が夕子に優しくだった。
「そうかなぁ・・」
「そりゃそうよ、ここ出る時も家に電話して、これから 行ってきますって言ってよね、夕子ちゃん」
「えっー そうですかぁー しなきゃダメですかぁ・・」
「ダメよー じゃないと、もう泊めてあげないからね」
「厳しいなぁ、けっこう直美さんって・・」
「当たり前じゃない、優しいだけじゃないのよ・・」
口は厳しかったけど、もちろん笑顔での直美だった。
「まっ いいから、ちゃんと食べていこう」
話が長いと、先に俺だけご飯が終わりそうでいやだった。
「うん、しっかり食べよう、夕子ちゃん」
「はい、おいしいから、食べますよ、柏倉さん、お味噌汁のおかわり、いかがですか・・」
「はぃ、では、頂きましょうか・・」
言い終わると、お椀をうれしそうに持って台所にだった。帰ってくると、直美のお椀にもお味噌汁をだった。

「どうですかぁー 似合ってますかぁー」
昨日直美のもらったマフラーを首に巻いて、俺と直美にだった。
「似合ってるわよ、夕子ちゃん」
「はぃ、大事にしますね」
「どうですか、柏倉さん、似合ってますかぁー」
「うん」
「あっー そっけないなぁー 直美さんが首にしてる時と比べてませんかぁー」
たしかに、よく高校3年生の時に直美の首を暖めてたマフラーだったから、当然その姿を思い出していた。
「うん、そうだけど、夕子も似合ってるよ」
作品名:ひとつの桜の花ひとつ 作家名:森脇劉生