ひとつの桜の花ひとつ
「直美さんのところならどうかなぁ・・直美さんが電話に出てくれたら、泊まってもいいっておかーさん言うかなぁ」
「夕子ちゃん電話してみなよ・・そうしたら、ゆっくりできるし、明日はここから3人で行けばいいんだから」
「はぃ、電話してみようっと・・」
ソファーの前に座って話を聞いていたけど、お許しでるのかどうかは半分半分かなぁって考えていた。
「もしもし・・
夕子ですけど・・
今、直美さんと一緒で、直美さんの家にいるんだけど、
今夜、泊まってもいいかなぁ、 おかーさん・・」
えっ おかーさんさえ良ければって 言ってくれてるんだけど・・
うん、明日はここから、学校へは行く・・
そう、うん、今、代わるね」
「どうなの・・」
夕子から渡された受話器を握って直美が小さな声でだった。
「直美さんが迷惑じゃなければって」
「そう・・
電話代わりました。
お久しぶりです。すいません夕子ちゃんお泊めしてももいいですか、 ご飯食べようかって無理やり誘っちゃったもんですから
はぃ、伝えておきます
いえ、
はい、豪徳寺です
はい、明日は一緒にに大学も行きますから・・
はい、では 失礼します」
隣で耳をたてていた夕子の顔に笑顔だった。
「ふー緊張しちゃうわー いいってさ、夕子ちゃん、泊まっても・・」
「うわー 初めてです。泊まるのって・・」
「良かったね・・」
直美もうれしそうに夕子を見ていた。
「じゃー ゆっくりできていいね・・で、俺、お腹すいちゃったんですけど・・」
「劉にも よろしくって言ってたわよ、おかーさん・・」
「えっ・・なんで・・」
「あっ わたし前に同じマンションなんだけど、直美さんと柏倉さんって別の部屋に住んでるだってって言った事ある・・」
直美と一緒ににっこりしていた。
「はぃ じゃぁ ほんとに着替えちゃって・・」
直美が手にしていた、青色のパジャマを本当に夕子に差し出していた。
「はーい お借りしまーす」
「今、それだけだと寒いから羽織るもの出してあげるね」
取り出してきたのは、俺の紺色のカーディガンだった。
「それ、劉のだから・・」
「すいません お借りします」
言いながら、夕子は隣の部屋に着替えにだった。
「ねぇ 寝るのってここに3人で寝ようか・・」
「布団ないぞ・・」
「あとで、わたしのところから持ってきてよ、それなら平気でしょ」
「えー、ま、夕子がそれでよければだな・・」
「聞いてみるね」
いい終わったら、短くキスをされていた。
「もう、今夜はできないからね・・劉・・」
「うん、じゃぁ もう1回だけ」
「もうー」
うれしそうに少し笑っていた。
「どうですかー 似合いますかぁー」
大きな声を出しながら夕子が戻ってきていた。
「うん、見慣れた格好で・・落ち着くね、ねっ、直美・・」
「うん、たしかに・・」
「もうー ひどいんだからー」
夕子のはずかしそうな笑い声が部屋に響いていた。
もちろん 直美も俺も少し笑っていた。
明日が18歳の高校生の大事な試験発表の日とは思えないにぎやかな夜の始まりだった。
作品名:ひとつの桜の花ひとつ 作家名:森脇劉生