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名誉毀損の認定方法

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これに対して、都立大事件では、原告XとY1らはY2(東京都)が設置する都立大学の学生であり、XらのグループとY1らのグループとの間には都立大学の自治会ないし新聞会の正当性をめぐって争いがあったが、平成10年3月の入学手続きの際に両グループが衝突し、両グループの学生が一週間から10日の障害を負うという事件が発生した。Y1らは、都立大のパソコン教室のシステム内で、学生個人の利用資格で開設したホームページにて、XらのグループがY1らに暴力を振い傷害を負わせたことなどを内容とする文章を掲載した。Xらは、平成10年8月に都立大学に対して抗議文を送り、都立大学はこのホームページへのリンク停止を行い、アクセスを容易にできないようにし、運営者である情報教育担当教員は本件文書を削除する措置はとらず、本件提訴後にホームページを閉鎖した。Xは、Y1らに対しては名誉棄損的文書を知った後の削除義務違反、名誉棄損にあたらないと判断したのであればその過失に基づく不法行為を理由として、慰謝料と謝罪広告の掲載を求めた。これについて裁判所は、Y1らの名誉毀損については、Xの社会的信用度を低下させるものであったとして肯定している。しかし、削除義務については「本件文書の掲載ページは現在では閉鎖されていること等を考慮して、削除」を斥けると判示している。
2ちゃんねる対動物病院事件では、作為義務が生じるのを「発言が書き込まれていることを具体的に知ったと認められる場合」と限定している。ここでは、「知ることができたはずであった」場合は含められていないし、ましてや、シスオペにすべての発言を常時監視するよう要求もしていない。具体的な義務違反の解釈要素として判示している。これは、従来の裁判例より幅広く、プロバイダーの削除義務違反を認めたものと評価できる。しかし、問題点が浮かんでくる。本件では、ログの不保存による責任追及の困難と権利侵害発言の予見可能性、常時監視の困難性が挙げられた。けれども、ログの不保存による非難根拠を見出すには無理がある。また、掲示板は匿名による発言を可能にする場を提供して侵害情報が書き込まれる危険を作り出した損害を防止すべき義務があるとの趣旨に理解できる。本判決は、「本件掲示板において他人の名誉を毀損する発言がなされたことを知り、又は、知り得た場合」とするが、「法的に名誉毀損と評価できることを知りまたは知り得た場合なのか、それとも他人の社会的信用を低下させる発言を認識していればそれが法的に名誉毀損になるか否かにかかわらず削除義務が発生するのか」(22)という課題が残る。常時監視の困難に関しては、削除義務の限界を導く根拠であり、削除義務の存在の根拠ではない。
また、都立大事件では、削除義務の要件を両方満たしている為、削除義務は認められなかったが「名誉毀損は基本的には被害者と加害者のみが利害関係を有する事柄であるから」「当該文書が名誉毀損文書に該当すること、加害行為の様態がはなはだしく悪質であること及び被害者の程度も甚大であることなどが一見して明白であるような極めて例外的な場合に限られる」となされた発言が名誉棄損を構成するか否かによって、管理者の責任が成立するか否かが変わることになる。しかし、ある発言が名誉棄損を構成するか否かは、それ自体として多くの問題を含む。
作品名:名誉毀損の認定方法 作家名:浅日一