小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

名誉毀損の認定方法

INDEX|3ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 

対抗言論の法理
 名誉毀損と表現の自由の観点から、上記にみた「相当の理由」とは別に、言論に対して、言論で対処するという「対抗言論」は、場の理論である。対抗言論の法理とは、表現の自由の基本原理を基礎に置き、論争当事者が実質的に対等な立場にあると評価しうる限り、国家の介入を控えて当事者の自由な論争に委ねるというものである。しかし、「平等な立場での対抗言論が可能ならば、常に名誉毀損の成立を否定してよいであろうか」(12)という疑問もあるが、被害者に対抗言論で闘うよう要求しても不当ではないと言えるような一定の状況が必要であるとした見方が有力である。その論拠として、第一に、被害者が、批判・攻撃をうけることが予想されるような立場に自ら進んで身を置いたという事情が挙げられる。(13)何もしていないのに突如攻撃の対象とされたような場合にまで、対抗言論に訴えることを要求するのは、たとえそのためのアクセスをもつ場合でも、フェアでないとする。第二に、批判者が同じ攻撃を執拗に続けるような場合(14)には、その都度対抗言論で対応せよと要求するのはフェアでない。
表現の自由の観点からは、名誉毀損に対する救済法方法は、表現者に対して法的制裁を科す前に、まず反論つまりは対抗言論により名誉回復を図ることに求めるべきとしている。法的制裁は、そのような対抗言論が機能しない場合に、その限度で認めればよいということになるとし、「対抗言論が機能しない場合は、名誉を毀損された者が名誉毀損者が使用したのと同等の表現手段を使用しえない場合」(15)として、対等な立場である場合の限定解釈として強調している。実際、ニフティサーブ第二事件も、ここで争って(16)、名誉棄損は成立しないとしている。

管理者の責任の内容
 では、掲示板上に名誉棄損発言ないしは、名誉を棄損すると疑われるような発言がなされた場合、管理者はいかなる責任を負うか。
 表現は、他者に伝える媒体(メディア)を通して行われる。プロバイダーは、その表現をする場所を提供している。そして、表現者はその場を借りているにすぎない。問題は、この時、メディアの管理権者が、そのメディアを通じて行われた表現の内容に対していかなる責任を負うかである。

管理者の開示義務
 掲示板上で、名誉毀損がなされたとき、その情報発信者が被害者に対し損害賠償等の責任を負うのは当然であるが、それを請求するには、発信者の身元を明らかにしなければならない。ところが、ネット上ではハンドルネームを使用する事が多く訴訟を起こすにしても被告の特定できないという問題に直面する。これに対し、プロバイダーは、発信者の住所・氏名等に関する情報を有している(17)。そのため、プロバイダーは被害者に対して、その情報発信者の身元を開示するべき義務(開示義務)を負うとされている。
 確かに、従来の慣習では、発信者情報も通信の秘密の保護を受けると考えてきた。その論拠は2説あり、一つは、発信者情報自体が通信の内容とは別個の独自の秘密性を認められるべきであると考える。この説に立てば、プロバイダーは発信者情報を被害者に開示する事を禁じられているという解釈になる。故に、開示を認めるためには、この禁止を解除する新たな立法が必要であるということになる。これに対して、もう一つの説では、発信者情報に秘匿性を認めるのは、それが通信内容を推測させる事がありうるからに過ぎず、それ自体が独自の秘密性を認められているわけではないと考える。つまり、通信内容の秘密を寄り安全に保障するために、内容を推測させる周辺情報をも秘密の範囲に取り込んで保障したに過ぎないのであり、この理解からは、通信内容自体に秘密性が無い時にまで、周辺的な情報だけを特に保障する必要はないという見解である。しかしながら、現在では被害者救済を用意にする為にプロバイダー制限法4条が規定している。これによると、同条では、被害者は次の二つの要件を満たす限り、プロバイダーに対し発信者情報の開示請求をできる。第一に、名誉毀損の成立していることが明らかであるとき。第二に、発信者情報の開示が発信者に損害賠償を請求するために必要である等、開示を求めることに正当な理由があるときである。そのため、プロバイダーは発信者の情報を開示すべき義務を負うといわれている。

管理者の削除義務
 被害者に対する責任として、開示義務の他に、削除義務がある。プロバイダー責任制限法3条1項は、この責任が生じる場合(18)を次のように限定している。まず、その表現の送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であること。また、それを前提に、その表現により「他人の権利を侵害されていること」を知っていたか、あるいは知る事ができたと認めるに足りる相当の理由があること、である。この要件の立証責任は、賠償を請求する側にある。この点の例として、2ちゃんねる対動物病院事件(19)(20)、都立大事件(21)を挙げる。 
2ちゃんねる対動物病院事件は、原告A(動物病院)が、被告の運営するインターネット上の電子掲示板「2ちゃんねる」において、原告の名誉を毀損する発言が書き込まれ、原告が掲示板上で削除請求をしたにもかかわらず、被告がそれらの発言を削除するなどの義務を怠り、原告の名誉が毀損されるのを放置していた事案である。これにより、原告は精神的損害等を被ったなどして、被告に対し、民法723条または人格権としての名誉権に基づき、本件掲示板上の名誉毀損発言の削除を求めた。これについて裁判所は、本件掲示板は約330種類のカテゴリーに分かれ、一日約80万件の書き込みがあり、削除人はそれを業とする者ではないボランティアであることからすると、他人の権利を侵害する発言が書き込まれているかを常時監視し、削除の成否を検討することは事実上不可能であるため、「被告は、遅くとも本件掲示板において他人の名誉を毀損する発言がなされたことを知り、又は、知り得た場合には、直ちに削除するなどの措置を講ずるべき条理上の義務を負っているものというべきである」と判示している。
作品名:名誉毀損の認定方法 作家名:浅日一