陰陽戦記TAKERU 後編
香穂はそのまま白虎の力を解放して高速移動、時々止まるなどして饕餮の周囲を旋廻した。
『おのれ!』
饕餮が前足を振り上げて香穂を踏み潰した。
敵を倒したと思った饕餮は足をどけるが香穂の姿は無かった。
饕餮が眉を細め後ろを見るとそこには香穂の姿があった。
踏み潰したと思ったのは香穂の残像だった。
『チッ、小娘ぇ……』
饕餮は忌々しく舌打ちをする、
すると目の前に拓朗が立ち塞がり玄武の鎚を大きく振り下ろした。
「はぁああっ!」
アスファルトを砕いて巨大な霜柱が出現、壁が飛び出して饕餮の周囲を包み込み逃げ場を塞いだ。
『ヌゥ、小癪な!』
饕餮が両腕を振るって氷柱を砕こうとしたその時……
『ムッ?』
鏡のように研ぎ澄まされた氷にに1つの影が映った。その影とは武だった。
『なるほどな、そう言う事か……』
拓朗と香穂は囮、攻撃の主体は武、そう饕餮は呼んだのだった。
『馬鹿め、そんな幼稚な手に誰がかかるかぁ――!』
饕餮の首が180度回転すると大口を開けて火球が武に当った。
だがその途端武の姿が砕け散った。
『何っ?』
饕餮は地面に落ちた物を見る、今は水となってしまったがそれは氷だった。
『こ、これは……』
「こっちだよ!」
曲がった首を元に戻すとすぐそこには武の姿があった。
作品名:陰陽戦記TAKERU 後編 作家名:kazuyuki