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陰陽戦記TAKERU 後編

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 それから数分後、美和さんは意識を取り戻した。
 起きたら起きたでまた騒ぎ出したが何とか落ち着けると茶を出して加奈葉がテーブル越しに質問をして行った。
「……美和さん、貴女ここがどこだか分かる?」
「分から…… ない」
 ちょっとショックだ。一緒に過ごしてもうすぐ1年だってのに……
「じゃあこれ使える?」
 加奈葉が取り出したのはテレビのリモコンだった。美和さんはそれを取るとリモコンのスイッチを入れてチャンネルを回した。
「少なくともテレビは使えると……」
 加奈葉がそれを確認すると次の質問をした。
「美和さん、貴女どこが故郷だか分かる?」
「村…… 住職様に育てられたの……」
「え、ちょっと待てよ……」
 美和さんの親って宮廷陰陽師だから都のはずじゃ……
「でもみんな私が要らないって…… 鬼の子だから殺しちゃえって……」
「何だそりゃ?」
 おいおい、物騒な事になったな……
「お父さんとお母さんは?」
「知らない、顔も分からない…… ずっと、一人で……」
『あっ!』
 朱雀は何かを思い出した。
『武、ちょっと来て』
 俺は麒麟と供に廊下へ出た。
「何だってんだよ?」
『あの美和は私と出会った時の美和よ』
「美和さんって都で生まれたんじゃ……」
『育ったのは都よ、でも産まれたのは違う、美和は捨て子だったのよ』
「……初耳だぜ」
 朱雀は美和さんと契約する前は養父である宮廷陰陽師と契約していた。
 美和さんの養父はある日、契約の手鳴らしにと鬼の子の噂を聞きつけて討伐に出かけた。
 しかし途中で餓死寸前だった美和さんを見つけたと言う、体中酷い痣や擦り傷だらけで今にも死んでしまいそうだったらしい、
『後になって分かったの、その鬼の子は実は美和の事で…… 生まれつき法力が高くて霊や鬼が見えていたのよ、それを村人達は忌み嫌い、村に干ばつが訪れると美和の責にして殺そうとしたって訳』
「……酷ぇ」
 美和さんにそんな過去があったなんてな……
 しかしその村の連中許せねぇ、もしいるんなら殴りこみに行ってる所だ。
『今から千年以上も前の話だ』
「だけど美和さんにとっては数年前だろ」
 正直考えて人間の方がたちが悪い、
 少なくとも美和さんの村の連中は最低の下衆野朗供だ。
 もし俺がその時代の人間なら絶対助けなかった。
『滅多な事を言うな、お前は人を守る側なんだぞ』
「だからって美和さんに辛い思いをさせていい理由にはならねぇだろ!」
『気持ちは分かるけど、武が生まれる前の話でしょう?』
「そりゃそうだけど……」
『私達も覚えが有るわ、人間は確かに弱い一面もあるけど強い部分だってちゃんと持ってる、それは貴方が知ってるはずでしょう?』
 それは確かに分かる、
 学だってかつては暗黒天帝に騙されて色々やらかしたが今では立ち直った。
 それに香穂ちゃんだって窮奇に洗脳されても自分を取り戻した。
 かつては科学技術なんて無かっただろう、それで何かあると祟りだとか抜かしてた時代だからな……
「でもこれからどうするんだよ……」
「お兄ちゃん」
 すると香穂ちゃんが部屋から顔を出した。
 美和さんの診断が終わったと言う、
「加奈葉、どうだった?」
「少なくともここで生活して行くには大丈夫よ、ただキッチンとかは触らせない方は良いわね、火は危険だから……」
「そうだな…… あのさ、美和さん」
 俺は美和さんの側に座る、
「少なくともここには美和さんをイジメる奴なんて居ないから安心して良いよ、もしそんな奴が居たら俺がぶちのめすから」
「本当? お兄ちゃん?」
「おっ?」
 お兄ちゃん?
 そう言えば美和さんって子供の頃の記憶しかなかったんだっけ?
「あ、ああ…… そりゃ守るよ、だから大船に乗った気でいてくれ」
「嬉しい…… ありがとう、お兄ちゃん」
 すると美和さんは俺の腕に抱きついてきた。
「うおぅ?」
 美和さんは凄い無防備だった。
 いつもの美和さんからは想像すら出来ない状況だった。
 それにしても美和さんは良い匂いで柔らかかった。やべっ、この美和さん最高!
「ちょっと武、デレデレすんなら他所でやりなさい」
「えっ?」
 俺が正気に戻るとみんな呆れていた。
 香穂ちゃんなどは眉を釣り上げていた。
「それと武ぅ……」
 加奈葉は笑顔だったが背後から殺意のオーラが見えた。
「そう言えばさっき言ったわよねぇ、私が『おっかない』とか『食いついたりは』とか…… 人を何だと思ってる訳?」
 そう言えばそんな事を言った記憶があった。
 この後俺が加奈葉にボコボコにされたのは言う間でも無かった……