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陰陽戦記TAKERU 後編

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 俺は麒麟の鎧を装着して渾沌と戦った。
 こいつの弱点は分かっているのである程度戦闘は楽だった。
「おりゃああっ!」
 奴が力を使う瞬間を狙って俺は胸に手を翳して鬼斬り丸の柄を召喚すると青龍の力を解放する、金色の光の刃に青い光が絡みつき、思い切り振り下ろした。
『ギャアアッ!』
 渾沌は大爆発、そのまま消滅した。
「おかしいな……」
 俺は首をかしげる、渾沌のとの戦い方は分かっていた。
 しかしそれにしては弱過ぎる、そう考えていると麒麟が言って来た。
『武、こいつは渾沌じゃない、』
 なんだって?
「どういう事だよ?」
『……分からない、こんな事ができるのは奴だけだが、それにしては陰の気の波動があまりにも弱すぎる、まるで普通の鬼並だ』
 要するに渾沌の能力を持った鬼が登場したって事か? そんな事ができるのはやっぱり奴だけだよな……
「あ、そうだ。とりあえず香穂ちゃん達の応援に……」
 だがその時、突然電話が響いた。
 拓朗からだった。
『先輩ですか? 檮杌なんですけど…… もう倒しました。』
「お前も?」
 檮杌も渾沌もそんなあっさりやられる奴じゃない、
 ちなみにこの後香穂ちゃんからも電話が掛かってきて窮奇をあっさりと倒してしまったと言う、
 俺は負に落ちないまま加奈葉と学が待つ場所まで帰ってきた。

 俺は大学の入り口で待つ加奈葉達と合流した。
「武、無事だった?」
「あ、ああ……」
「どうした? どこか怪我でもしたのか?」
 凄く楽だった。凄く不思議なくらいに……
「香穂ちゃんや拓朗もあっさり倒したって言うし、一体どうなってんだ?」
「倒したはずの三体が出てくるか…… もしかして生きていたとか?」
『奴等の陰の気は完全に途絶えていた。生き返るはずが無い』
 麒麟が言って来る、俺も奴等の最後は見た。
 生きていたとは思えたくない、と言うより考えたくない……
「となると……」
 こんな事が出来る奴は限られている、
「饕餮か……」
 奴が倒された魔獣達と同じ外見と能力を持つ鬼を造り出した。
 だけど所詮まがい物は紛い物、本人には遠く及ばないと言った所か……
「そう言えば美和さんは?」
 俺はふと気になった。加奈葉が電話したはずだけど……
「うん、けど遅いね」
 香穂ちゃんや拓朗はあっさり倒したって言ってたから美和さんは到着してないんだろうが、それにしては連絡が無いのが気になる、
「まぁいいや、連絡すれば良い事だから……」
 俺は携帯を手に取るがその時だった。
 突然空から俺の前に何かが落ちてきた。それは朱雀の宝玉だった。
「朱雀?」
 俺は朱雀の宝玉を持ち上げる、途端朱雀は具現化するが物凄く辛そうだった。
『た、武…… 美和が……』
「美和さんがどうした?」
 俺が事情を聞こうとすると突然左手の携帯が鳴った。
 美和さん用の『バクレツ大辞典』の着メロだった。
「はい、美和さん?」
 俺は電話に出る、
『ククク……』
「なっ?」
 出てきた相手は美和さんじゃなかった。
 薄気味悪い声に俺は顔を強張らせる、
『その声はあの臆病小僧か?』
「テメェ…… 饕餮か?」
 俺を臆病と言うのは奴しかいない、
 話を聞いていた加奈葉と学も顔を顰める、
「テメェ、何で美和さんの携帯を持ってんだ? って言うか美和さんをどうした?」
 俺が尋ねると饕餮はあざ笑う、
『この娘がそんなに心配か?』
「テメェ……」
『それはお前達次第だな、返して欲しくば学と言う男をよこせ』
「何っ?」
 学を? 何んでだ?
『知っているぞ、その男は『暗黒』に最も近い場所に居たのだろう?』
 暗黒に近い……
 となると以前話し合った事が完全に歯車が噛み合った。
 こいつ等は暗黒天帝に関係している、
『今すぐその男を連れて来い…… 聖獣の力を使えば我の居場所は分かるはずだ』
「あ、おい待て…… くっ!」
 通話が途切れた。
「どうしたの?」
 加奈葉が心配そうに見つめてくる、
 俺が話そうかどうか迷っていると朱雀が言って来た。
『美和は…… 饕餮にやられたわ』
「「えっ?」」
 学と加奈葉は目を見合わせる、
 朱雀の話では香穂ちゃんの所に駆けつけようとした時に饕餮が現れた。
 美和さんは戦おうとしたが饕餮が黒いガスのような物を吐き出すと美和さんは倒れ、そのまま奴に飲み込まれたのだと言う、
 だが美和さんは最後に渾身の力を込めて朱雀を俺の所に瞬間移動させたのだと言う、
「美和さんは生きてる!」
 俺はさっきの電話が饕餮だと言う事を話した。
 そして美和さんを帰して欲しくば学を渡せと言う事もだ。
「僕を?」
 学は不思議がった。
 それは俺にも分からなかった。
 あいつは学を使って何をしようってんだ?
「そんなのどうだって良いわよ、これは罠、だから2人供ダメよ」
『だけど美和はどうなるの?』
 朱雀の言うとおりだ。
 もし行かなかったら美和さんの命の保障が無い、
 俺は学も捨てたくねぇし美和さんも助けたい!
「……それは分かるけど」
 加奈葉も納得できないようだった。
 それは分かる、学はこいつの彼氏だからな…… 俺だって美和さんを渡せなんて言われたら……
「分かった」
 すると学は言って来た。
「僕は行くよ、美和さんを助ければ勝機はあるんだ」
「けどすんなり返してくれるとは思えないわよ、きっと学を奪った後殺されるわ!」
「……そうだな、こっちも作戦が必要だ」
 とは言え香穂ちゃんや拓朗に救援を求めるわけには行かない、
 桐生さんは大学に戻っちまった訳だし、今から電話してきてもらおうにも時間がかかる、俺が何とかしなきゃならねぇって事か……
「……武、こんなのどうかな?」
「えっ?」
 学は自分の考えを俺達に話した。