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陰陽戦記TAKERU 後編

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第二話 その名は四凶


 遊園地は見るも無惨になっていた。まるで敷地全部がお化け屋敷になったみたいだ。
「……何だよこりゃ?」
「酷い……」
 一体何があったってんだ?
 訳が分からねぇ…… そう思っていると、
「武!」
 聞きなれた声が聞えたかと思うとそれは学と加奈葉だった。
 結局雑誌は役に立たなかったんだろう、加奈葉の服装はいつも着てるワンピースだった。
「何があったんですか?」
「分からない、突然こんなになって……」
「突然って、怪しい奴とか見なかったのか?」
「いや、僕達は来たばかりだったし……」
 俺が思ってると突然拓朗が指を差した。
「あそこ!」
 見るとメリーゴーランドの屋根の上に何かがいた。
 良く分からないがグルグル回転している。
「何だあれ、鬼か?」
 俺は美和さんを見る、しかし美和さんは両肩を震わせて顔を青くした。
「この気配は…… 暗黒天帝?」
「何だって?」
 まさか生きてたってのか?
 すると麒麟の宝玉が輝いて言ってくる。
『いや、似てるが違う!』
 何だそりゃ? 似てるが違う?
『だけど暗黒天帝に近い力を持ってる、気を付けろ!』
「分かった!」
 俺は鬼斬り丸を召喚、皆も聖獣の武器を構える、すると美和さんが朱雀の弓の弦を引いた。
「滅っ!」
 炎の矢が飛んで行くが美和さんの渾身の一撃は『それ』に弾き返されてしまった。
「これでどうだ!」
 拓朗も氷の礫を放つが弾き返されてしまう。
「香穂ちゃん、」
「うん!」
 白虎の力で俺と香穂ちゃんは大地を蹴ると助走をつけて大ジャンプ、メリーゴーランドの屋根まで到達した。
「でりゃああーっ!」
 鬼斬り丸に玄武の力を上乗せして『それ』にぶつける、香穂ちゃんも白虎の爪で攻撃するが『それ』はビクともしなかった。
 それどころか強烈な衝撃波が起こって俺達は吹き飛ばされた。
「うわあっ!」
「きゃあっ!」 
 俺は身を翻して地面に着地、香穂ちゃんは白虎が瞬時に空気の流れを操り風のクッションを作ったので地面に叩きつけられずに済んだ。
「香穂ちゃん、大丈夫か?」
 拓朗は香穂ちゃんに駆け寄る、俺の側には美和さんが寄って来る。
「何だってんだありゃ?」
 ただ回ってるだけで何もしてこない、
 仕掛けたのはこっちだから反撃したって事になるだろうが、もしこの異変がこいつのせいだとしたら何とかしなければならない。
「こっちから仕掛けなければ何もしないのでは?」
「それもあるだろうけど……」
 俺達が話していると『それ』に変化が訪れた。
 突然フワリと浮かび上がるとまるで円盤みたいに空を飛んだ。
 そして拓朗達を目掛けて体当たりしてきた。
「玄武っ!」
 拓朗は玄武の力で巨大な霜柱を作り『それ』の攻撃を防ぐ、しかし氷の壁に亀裂が入り砕けそうだった。
「拓朗、香穂ちゃんと伏せろ!」
 オレはジャンプすると麒麟、青龍、朱雀の力を解放した鬼斬り丸を大きく振り下ろし『それ』切り裂いた。
『グウウウッ!』
 突然『それ』は唸り声を上げた。
 少なくとも効いてるのは確かだ。
 玄武が効かないなら恐らく白虎や麒麟も効かないだろう、そうなったら唯一通じるとすれば青龍しかいない。
『グオオオオッ!』
「な、何っ?」
 すると『それ』は眩い光を放つと雷撃のような物が放たれて周囲を破壊した。
「うわあああっ!」
 俺は吹き飛ばされて一瞬の内に遊園地の乗り物が粉々に砕け散って頭上から降り注がれ、俺達は瓦礫に埋もれた。
「くそっ!」
 俺は全ての力を解放して瓦礫を吹き飛ばす、するとすぐ側で火柱が上がると美和さんが出てきた。
「美和さん、無事か?」
「え、ええ……」
 遠くの方でも瓦礫が退けると拓朗と香穂ちゃんが出てきた。だが……
「あれ、加奈葉さんと学さんは?」
 拓朗が言うと俺は周囲を見回す、あいつらは俺達と違って聖獣の力を持ってない、つまり普通の人間だ。
「学、加奈葉っ?」
 俺が叫ぶと後ろの瓦礫が盛り上がって学と加奈葉が出てきた。
「良かった、無事だったか?」
 俺が尋ねると学は微笑する、だが学は糸が切れた人形のようにその場に倒れた。
「学、学っ!」 
 加奈葉は揺するが学は意識が無かった。
 恐らく加奈葉を庇ってどこかを痛めたんだろう、額から血を流してるから頭を打ったんだろう、
「拓朗、頼む!」
「はい!」
 拓朗は学に近づいて玄武の力で傷を癒す、
「野郎……」
 俺は周囲を見回した。
 すると『それ』はいた。
「許さねぇ!」
 俺が剣を構えると『それ』は回転を止めてその場に降り立った。
『グルルルル……』
 そいつは俺と同じくらいの大きさの犬みたいな化け物だった。
 白く長い体毛に四足歩行、特に前足が熊のように大きな5本の指に尻尾が全身と同じくらい長い化け物だった。
「こいつ……」
 俺にも分かる、このプレッシャーは暗黒天帝と同じだ。
「麒麟、本気で行くぞ!」
『おう!』
 鬼斬り丸が麒麟の力で粒子状に分解されると俺の体に纏わりつく、するとオレに麒麟の鎧が装着される。
「うおおおおっ!」
 俺はそいつに飛び掛り拳を突きたてた。
 だが拳はめり込むどころか俺ごとすり抜けた。
「うおっ?」
 俺は勢い余って地面に転がる。
「武様っ、青龍の力を!」
「そうか!」
 俺は胸の麒麟の水晶に手を当てると鬼斬り丸の柄を取り出す、
 そして金色の光が刃を作ると刀身に青龍の力である青い光が絡みつく。
「うおりゃああっ!」
 さっきは青龍の力は効いた。
 つまりこいつには実体が無いって事になる、となると青龍の力で倒せるはずだ。しかし……
「何っ?」
 俺は目を疑った。
 それは美和さんや香穂ちゃんも同じだ。
 何とさっきは効いた青龍の力が素通りしてしまったのだ。
「ど、どうなってんだ?」
 訳が分からない、こんな敵は初めてだ。
『グルル…… コントン……セイジュウ…… コロス……』
 さらに驚く事にこいつ喋りやがった。
 すると大きく手を振り上げると頭上に黒い雲が出現、稲光が放たれて落雷が降り注いだ。
「うわああああっ!」
 俺達はその場に倒れる、
 俺も力を使い果たして麒麟の鎧を維持する事が出来なくなった。
「がっ…… くそったれ……」
 俺は手を伸ばして鬼斬り丸を手に取って立ち上がろうとする、
『グルル…… ン?』
 俺を見たそいつは何かに気付いた。
 するとその時、どこからとも無く不気味な声が響いてきた。