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陰陽戦記TAKERU 後編

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 道を進んでゆくと目の前に大きな空間が広がった。
 昔親父に連れて行ってもらったドーム球場ぐらいはあるだろう、
 オレ達は影に隠れてフロアを見回すと宙に浮いてグルグルと回転している物体があった。
 あれは忘れたくても忘れない、四凶の渾沌だった。
「何やってんだ?」
 回転するにつれて岩壁が独りでに崩れ落ちてゆくのは分かるがただ穴を掘ってるだけにも見えない、
 俺はもう少し前に出ようと思ったその瞬間、手元の壁が崩れて地に落ちた。
『グルルルっ?』
「しまった!」
 俺は慌てて隠れるが遅かった。
 四凶は回転速度を速めると辺りが揺れ始め俺達がいる通路まで影響を及ぼした。
「まずい! 潰される!」
 俺達は止む無く部屋に入る、
 帰り道となる通路は潰れたがしかし、渾沌の後ろの壁が砕けてある物が出現した。
「なっ? これは!」
 それは化石だった。
 長い2本の牙に4本の足、見た目からしてナウマン象か何かだろう、恐竜じゃないのが残念だがそんな事を言ってる場合じゃなかった。
『ミツケタ……』
 渾沌は黒い球体状に姿を変えると化石と一体化、
 無くなった瞳が不気味に輝くと化石が岩壁をぶち破り俺達の前に立ち塞がった。
『コロス、コロス、コロスっ!』
 渾沌の顔が化石の額に現れると黒いオーラが全体を包み、
 人間の男を何人も繋いだような黒くて長い鼻が現れた。
『ウオオオオッ!』
 渾沌の巨体が浮かび上がると天井に勢いよくぶつかりパラパラと砂や石が降り注いだ。
「まずい、外に出るつもりだ。この上は確か商店街じゃ……」
 商店街じゃ年末の買い物で町の人達が賑わっている、
 こいつが外に出たら大惨事だ。
「しかたない、このまま叩こう!」
「ええっ!」
 だけどどうすればいい?
 こいつにはどんな攻撃も通用しない、だけどやるしかなかった。
「考えても仕方が無いか!」
 俺は青龍の力を鬼斬り丸に上乗せすると足を曲げてジャンプ、思い切り剣を渾沌の顔面に向かって突き出した。
 しかし案の定渾沌の体をすり抜けて俺は地面に降り立った。
「このっ!」
 次に白虎の力を解放して上段に構えた鬼斬り丸を振り下ろすと真空波が発生して渾沌を切り裂いた。
 しかしこれもすり抜けて天井を切り裂いただけだった。
「化け物め!」
 桐生さんも青龍の銃を乱射するがさっき俺が試したように青い光弾もすり抜けた。
「どうすりゃいいんだよ?」
 こいつにはどんな攻撃も通用しない、無敵じゃねぇか、
 俺は桐生さんの横に戻って来る。
「恐らく、何らかのトリックがあるはずだ。攻撃を外すトリックが……」
「トリック?」
「魔獣とは言え生きてるんだ。必ずどこかに弱点がある!」
 確かに、遊園地で青龍の力は効いた。
 確かにダメージを与える方法があるんだろうが……
 桐生さんは俺に言って来た。
「武君、悪いけど少し盾になってくれないか?」
「えっ? 盾?」
「ああ、こいつの攻撃法方をいくつかに絞ったんだが…… 残りは試して見ない限りは分からないんだ。」
「そうっスか…… 分かりました!」
 この人はマジで便りになる、
 この人の推理がどれだけ役に立った事か、
 実際今回の件もこの人が言わなきゃこいつは今ごろ表に出て暴れまわってたしな、
「だけどあんまり長く続かないっスよ」
「ああ、頼む!」
 俺は桐生さんの前に仁王立ちになって鬼斬り丸を構え、
 桐生さんは俺の後ろで背を合わせると青龍の拳銃を両手で構える、
『グルルルっ!』
 すると渾沌の二本の巨大な象牙が輝くと真っ赤な雷撃が放たれた。
 俺はとっさに青龍の力を引き出して雷撃を斬り裂いた。
 青龍の力は形の無い物を斬る力だ。エネルギーの攻撃なら切り裂く事ができる、
 少なくとも防御に関してはこっちが上だ。
「桐生さん!」
 桐生さんは横に跳んで青龍の銃を乱射する、
 しかし狙った先は奴の足元や壁や天上など手当たり次第だった。
「……違ったか」
「何がやりたかったんですか?」
 俺は再び桐生さんの前に立つ、
「もしかしたら影の方が本体じゃないかと思ったんだけど、違ったみたいだ」
「ああ、それで……」
 だけどそれは無理な話だ。
 何度も言うけどここは地面の下で影なんて無い、
「……となると考えられるのは」
 今度は桐生さんは額に向かって発砲、しかしこれもすり抜ける、
『グルルルルっ!』
 今度は鼻を大きく上げて口を開けると真っ赤な炎が噴出した。
 これも青龍の力で切り裂いた。
「はっ!」
 桐生さんの手の中で青龍の形状がサブマシンガンのように変形すると渾沌を攻撃した。渾沌の巨体を青い銃弾がくまなくヒットするがこれも全てがすり抜けてしまう、
『グルァァ――ッ!』
 すると渾沌は長い鼻を振りかざすと鼻腔から冷気が吹き荒れた。
「こなクソ!」
 今度は立てに振って冷気を切り裂いた。
「くっ!」
 俺は片膝を着いた。
 さっきから連発してるからそろそろスタミナが切れてきた。
「大丈夫か? 武君?」
「……そろそろヤバイっスよ」
 いくら形の無い物を斬る事が出来ても相手の攻撃力が想像以上に重過ぎる、
 斬れば斬るほど法力だけじゃなくて体にも負荷がかかる、
 今でも両手がガクガクする、明日があれば筋肉痛だなこりゃ……
 
 しかもあいつはケロッとしてやがる、
 攻撃してりゃ勝てると思ってんだろうな、羨ましいこった。
「これを外せば後が無いか……」
「いや、大丈夫でしょう、桐生さんなら」
 顔を顰め青龍のサブマシンガンを見た桐生さんに俺は言う、
「自信を持ってくださいよ、俺だけならきっとできませんでしたもの」
「そうか、じゃあ最後の一回頼む、ただし……」
 俺は桐生さんの作戦を聞く、その作戦とは……
『グルルルルッ!』
 渾沌の目から光線が発射される、
 俺は麒麟の力を込めた鬼斬り丸を盾にして敵の光線を防いだ。
「桐生さん今だ!」
「了解した!」
 今度は青龍がライフル状に変形すると渾沌の右目を狙った。
『ギャアア――――ッ!』
 青い光弾は渾沌の右目を撃ち抜いた。
 渾沌の額の顔が歪んで苦しむと箇所からどす黒い瘴気が溢れ出た。
 4本の足が曲がると混沌は蹲った。
「効いた! やっぱりこいつは……」
「ああ、攻撃のほんの一瞬だけ実体化するんだ!」
 言われてみればそうだ。
 遊園地で攻撃した時もこいつは力(回転すると形状が変わって砕ける)を使ってた。
 その時に青龍の力を使ったら通じた。
「実体化しなければ青龍の力さえも通じない、厄介といえば厄介だ」
「だけど弱点が分かればこっちの物!」
「そう言う事だ!」
 桐生さんは青龍の銃を宝玉に戻した。
「あとは俺がやる、君は休んでいたまえ」
「そんな、俺も戦いますよ!」
 すると桐生さんは首を横に振った。
「いや、君はこれ以上の力を消費しては駄目だ。もしかしたら君の力が必要になるかもしれない…… 俺は男2人で生き埋めなんてごめんだからね」
 言ってくれるぜこの人は…… 
 しかしそれには同感だ。俺もどうせ死ぬなら美和さんの膝の上の方が良い、
 俺達がここに来たのは玄武の力、拓朗達の力が及ばなかった場合俺の力が必要になるって事だ。
「もうお喋りは終わりだな、傷が治ったらしいな」