陰陽戦記TAKERU 後編
戦いが終わり犬は無事佐伯動物病院へと戻った。
怪我が治った事に疑問を抱いていた小春ちゃんや先生だったが無事だと言う事が分かるとすぐに退院、拓朗の家じゃ動物を買う事ができないので俺の家で飼う事になった。そして……
「メリークリスマース!」
翌日の夜、俺の家では無事クリスマスパーティーが開かれた。
クラッカーの音が飛び交い皆でご馳走を頬張る、
「本当にいいんですか? 私まで?」
俺の目の前にいた小春ちゃんは尋ねてきた。
「別に良いよ、前にも言ったけど拓朗の後輩なら俺達の後輩だから」
「そうよ、余計な事は考えなくていいのよ」
隣りの加奈葉が小春ちゃんの肩に手を置いた。
ちなみに麒麟達はここにはいない、
何しろ小春ちゃんがいるので俺達と一緒に参加させる訳にはいかず、加奈葉が聖獣達用のケーキとご馳走を用意して自分達だけのクリスマスパーティーを開いていた。さっき見に行ったが今までクリスマスを知らなかった連中とは思えないくらいのはしゃぎっぷりだった。
「気軽に来てくれよ、ライブも喜ぶよ」
ライブとはあの犬の名前だった。
拓朗が命名して小春ちゃん家の倉庫の奥にあった組み立て式の犬小屋を安く譲ってもらい庭に設置してそこにいる、
パーティーは飲んで騒いで一発芸を行って2時間ぐらいで御開きになった。
みんな帰り片付けも終わると俺は庭で右手に持っている白い星が描かれた赤い包み紙に緑のリボンを結んだ小箱を見た。
それは美和さんの為に用意したクリスマスプレゼントだった。檮杌との戦いの後一晩考えてようやく考えた物だった。
「武様」
「うおっ?」
俺は驚いて後を見る、
そこにはいつの間にか美和さんが立っていた。
「ど、どうしました?」
俺の声に美和さんも驚いたんだろうな、大きな目をさらに大きくさせている、
「いや…… それより何か用?」
「あ、そうでした…… これ」
美和さんは両手に持っていたサンタクロースの顔が描かれた紙袋を俺に差し出した。
「その、受け取ってください、『くりすますぷれぜんと』と言う物です。」
「み、美和さんが俺に?」
「……駄目ですか?」
「えっ? いやいやとんでもない…… って言うか俺もこれ!」
俺はプレゼントを美和さんに差し出した。
俺は美和さんのを、美和さんは俺のプレゼントを交換する、
「わ、私にですか?」
「ああ…… 喜んでもらえるといいけど」
「そんな、私こそ…… あっ?」
するとその時だ。空から雪が降ってきた。
「ホワイトクリスマスだ」
漫画や北日本でしかありえないシチュエーションかと思ったけどこの辺りでも充分に再現可能だったんだなと正直感心した。
だが様子からしてすぐに止んじまうだろうし積もる事は無いだろう、しかし俺達は雪が深々と降る空を何時までも見ていた。
作品名:陰陽戦記TAKERU 後編 作家名:kazuyuki