陰陽戦記TAKERU 後編
俺の携帯がメールを受信した。
しかし授業中なのでマナーモードなので教科書を立てるとポケットから出した携帯のメールを見た。
それは美和さんからだった。
「精肉店が?」
俺は眉を細めた。
帰る途中、俺は今朝の事件と美和さんが見た事件を考えて話を整理した。
あの犬は人間を憎んでいた。
四凶のどいつかは知らないが憑依して体を得た。
しかも餌を食ってなかったから腹を空かせて襲ったって所だろう、
『そんな所だろうな、だが武、問題はどうやって四凶をおびき出すかだ』
「……そうだよな、せめてあの犬の事が分かればな」
「先輩!」
するとそこへ拓朗と小春ちゃんがやって来た。
中学はもう終わってるのか2人は私服だった。
「僕達あの犬を探してるんです」
「あの犬…… きっとお腹を空かせてますから」
小春ちゃんは手にドックフードの入ったビニール袋を持っていた。
「小春ちゃん、ちょっと拓朗借りて良いか?」
「先輩?」
俺は拓朗の肩に腕を回して小春ちゃんに背を向ける、
(美和さんに聞いてるかもしれないけど、その犬には四凶が絡んでる、小春ちゃんに何かあったらどうするんだよ?)
すると拓朗は目を泳がせた。
(分かってます、でもほおって置けなくて……)
拓朗も基本的にNОと言えない、それが拓朗の良い所でもあるんだが……
「仕方ない、オレも手伝うぜ」
「えっ、良いんですか?」
「ああ、何とかなるだろ」
と言っても小春ちゃんを危険な目に合わせる訳には行かないからな、
頃合を見計らって抜け出すしかないな、
『武、今回は正直言って難しいぞ』
「何がだ?」
『人間と違って動物は知性はあっても理性と言う物が無い、つまり完全に鬼に飲まれた人間と同じだ』
そう言えば完全に鬼に飲まれた者は憑依された鬼を倒せばそいつも死ぬんだっけ?
「……最悪の事を想定して置いた方が良いかもな」
俺は目の前で犬を探している小春ちゃんを見る、
すると俺の横にいた拓朗がその気持ちを察したのか言って来た。
「先輩、今回の事…… 僕に任せてくれませんか?」
「何か手があるのか?」
「……いえ、そう言う訳じゃないんです、だけど、確めたい事があるんです」
「確めたい事って?」
「それは……」
拓朗が口ごもった。
『武、四凶の気配だ!』
突然麒麟が言って来た。
「どこだ麒麟?」
俺は辺りを見回す、
すると俺達の進んでいる先から何かが飛んできた。
それは鳥でも無ければ飛行機でもない、何と乗用車だった。
「うわっ?」
俺達の目の前に落ちてきた。
「な? ええっ?」
何も知らない小春ちゃんはパニックになって腰を抜かした。
俺達には経験がある、こんな事が出来るのはあいつしかいない、
「檮杌!」
よく見ると空から色々な色の車やオートバイが空を飛んで市街地の方に向って行った。
「……こりゃ大惨事だ。拓朗!」
「はい、佐伯さん。君は安全な所に隠れていてくれ」
「えっ、でも……」
やっぱりあの犬の事が心配なんだな……
「小春ちゃん、君の気持ちは分かる、でも危険を感じて病院に戻ってるかもしれないだろ? 帰る場所はあそこしかないんだから」
明らかに無理があるけどそれを聞くと小春ちゃんは考え込んだ。
「分かりました。でも危ない事はしないでくださいね」
「ああ」
小春ちゃんが引き返すのを確認すると俺と拓朗は爆発の現場に急いだ。
作品名:陰陽戦記TAKERU 後編 作家名:kazuyuki