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陰陽戦記TAKERU 後編

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『何ッ?』
 噴出した陰の気はまるでブラックホールのように渦を巻くと饕餮の体を吸い込みはじめた。
『ぐあああッ? な、何故だ?』
『もう良い、貴様は下がれ』
 俺達の耳に不気味な声が響き渡る、
 この声は忘れたくても忘れられなかった。
『暗黒! 何故だ? 我を取り込もうと言うのかっ? 復活させた恩を忘れたのかっ?』
『黙れ、不甲斐なき貴様に代わり余がこの世を破壊すると言うのだ。大人しく余の一部に戻れ!』
『ぎゃああああっ!』
 饕餮は黒い渦に飲み込まれて姿を消すと渦は消滅、変わりに大きな黒い卵状の物体が出現した。
 それには見覚えがある、かつて奴が学を使って過去の世界に戻ろうとした時に集めた陰の気の塊そっくりだった。それに亀裂が入り粉々に砕けると1人の男が現れた。
 50代後半くらいだろう、まるで血の気が失せたみたいな白い肌に凄く細い顎に乱れた髪、服装は美和さんが着ている服に似ているが、ボロボロで黒い色違いの服を着ていた。こいつが暗黒天帝か?
「くっ……」
 奴が目を開くと魂まです追い込まれそうな真っ黒な瞳にオレ達は思わず息を飲んだ。
 前回の陰の気の中に浮かぶ首だけと言うのも不気味でインパクトはあったが、今回は人間と全く同じと言う事で逆に不気味だ。
 そんな事を思っていると暗黒天帝は自分の右腕を見て指を折り曲げる、
「やっとこの姿を取り戻した。余はこの時を待っていた!」
 暗黒天帝が目を見開き口の端を上げると三日月のように広げて笑い出した。
「これで最早余を止める事などできぬ…… まず手始めに邪魔をした貴様達を消し去ってくれるわ!」
 暗黒天帝は目を吊り上げオレ達をにらみつけた。
「チッ!」 
 俺は麒麟の鎧を装着、美和さん達も聖獣を鎧化させる、
「新たな力を得たか…… ならば!」
 暗黒天帝が念じると全身から陰の気が噴出して奴の体を包み込むと饕餮の頭、胴体が渾沌、右肩から下が檮杌、背中と左肩から下と窮奇と言う商店街で戦った合体四凶がコンパクトになったような甲冑に変化した。
 そっちも新しい力か……
「さて、始めようか……」
 窮奇の翼が広がると竜巻でも起こったような突風が吹き荒れると土煙を巻き上げながら奴は宙に浮かんだ。
「まずは挨拶代わりだ。受け取れ!」
 暗黒天帝が右手を翳すと手の平から雷撃が放たれた。
「このっ!」
 拓朗が前に出てバリアを張って暗黒天帝の攻撃を防いだ…… と思いきや、バリアは粉々に砕けて拓朗を直撃した。
「うわあああっ!」
 拓朗は俺達の間を通り過ぎて遥か後方の石畳に転がった。
 だがそれだけじゃなかった。
「なっ? 玄武っ?」
 拓朗は元の姿に戻っていた。
 すぐ側には玄武の宝玉が転がっていた。
『ぐっ…… 力が…… 入らん……』
「玄武! しっかりしろ!」
 拓朗は宝玉を拾い上げるが玄武は具現化しなかった。
 と言うより出来ないと言った感じだった。
 よく見ると宝玉に電撃のような物が迸っている、
 恐らくあれが玄武の具現化を防いだんだろう、
「ならばこれならどうだ。美和さん!」
「はいっ!」
 美和さんの朱雀の弓から紅の一閃、桐生さんの青龍の銃剣から青い閃光が放たれると螺旋を描いて暗黒天帝目掛けて飛んで行った。
「ふん!」
 しかし驚くべき事に暗黒天帝は両手で2人の攻撃を受け止めてしまった。
 だけどこれで両手が塞がった事になる、
 香穂ちゃんと俺が白虎の力を解放して背後に回ると俺は鬼斬り丸に全ての力を込めて暗黒天帝目掛けて振り下ろした。
「これで終わりだ―――――っ!」
 あの時暗黒天帝に放った赤・青・金・黒・白の五色の斬撃と香穂ちゃんの合わせ攻撃が炸裂、暗黒天帝を討ち取ったと思った。
「莫迦者が!」
 途端腰から生えてる渾沌の尾が伸びると俺と香穂ちゃんを薙ぎ払った。
「うわっ?」
「きゃあっ!」
 俺達はそのまま地面に叩きつけられると暗黒天帝が両手を突き出すと美和さん達の攻撃は逆流して美和さん達に跳ね返った。
「きゃああっ!」
「うわああっ!」
 足元が爆発して美和さんと桐生さんは転がった。
「ふん!」
 暗黒天帝が右手を天に上げると手の平から噴出した陰の気が黒雲のように空を負おうと稲光が迸り北野天満宮一帯に落雷が落ちた。
「うわあああああっ!」
 光の鉤爪は大地を抉り建物が砕いた。
 さらに俺達は敵の落雷を喰らって聖獣との繋がりが切れた。
「麒麟! 美和さん! みんなっ!」
 俺もみんなも拓朗と同じく聖獣の鎧化が解けていた。
 奴は人間と聖獣との力を遮断する能力を持ってる、
 あの時は不完全な状態だったから俺達に触れなければ出来なかったけど、今回は自分の体を取り戻し、完全体になった事でパワーアップしやがった。

 俺達だって強くなった。
 だけど奴は俺達の想像を遥かに越えていた。
「くそっ!」
 俺は立ち上がろうとするが全身に力が入らない、これも奴の攻撃の影響か?
「もう終わりか? あっけないものだな……」
 暗黒天帝は氷よりも冷たい瞳で俺達を見下した。
 皆聖獣の力を引き出そうとしているがちっとも反応しなかった。
「さてと、この前の借りを返させて貰おうか、まずはこの娘からだ」
 すると暗黒天帝の右手の中に両刃の両手剣が現れると石畳に這いつくばる美和さんに向かって歩き出した。
「美和さんっ!」
 くそっ! 動きやがれ俺の体! 
 俺の願いも虚しく、暗黒天帝の振り上げた剣の切っ先が美和さんを捕らえた。
「死ねっ!」
「美和さぁ――んっ!」
 最早これまでか…… と思われたその時だった。
「待て――ッ!」
「ムッ!」
 何かが吹き抜けたかと思うと暗黒天帝の右腕が切り裂かれて宙に舞った。
「ぐっ! 貴様っ!」
 暗黒天帝が振り向くとそれは身を翻し大剣を敵に向けた。
「学っ!」
 学は無事だった。
 鬼の鎧を装着していた。
「しくじったな、暗黒天帝、陰の気を使った攻撃なら陰の気で相殺できる!」
 RPGで言う所の炎属性の敵に炎が通じないのと同じ理屈か、だけど学には聖獣の力を込めたバッテリーがある、
「おのれ…… 他人の力にぶら下がる事しかできぬお前に一太刀食らわされるとはな」
「僕は昔の僕じゃ無い、生まれ変わった。愛する者や信じられる仲間が出来たんだ!」
「フン、信頼か…… そんな薄っぺらな物など何の役にも立たん!」
「何だと?」
「大体人間などそう言う物だろう、人間など所詮は他人同士、所詮は自分の都合さえ良ければそれで良いと言う身勝手な下等生物であろう」
「違う! 確かに人間は1人1人違う…… だけど人同士が繋がればどんな事でもできるんだ!」
「人同士が繋がればだと? フッ、アハハハッ!」
 暗黒天帝は大きく笑い出した。
「まさか貴様の口からそんな言葉が出るとは思わなかったぞ、学」
「何がおかしいっ?」
 俺は叫ぶと暗黒天帝は俺を見た。
「これが笑われずにいられるか、そいつは一度闇に落ちて世界を破壊しようとしたのだぞ、そんな事を言う資格があると思っているのか?」
「そんなの知った事じゃない!」
 すると加奈葉が出てきた。学が守ってたのかこいつも無事だったのか、