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さらばしちはちくがつのなきがら

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始業式




「お、髪切ったな」
「うん、……さとうくんは伸びたねえ」
「え、まじで?」
「うん」
「えー、ひと月とちょっとやん」

夏休みに約束は無かった。
もしかしたら、それが今年の夏休みがなんだか長かった理由かもしれない。

「ていうかあれやですずきくん、」
「うん?」
「一回くらい来てくれても、よくない。うちのみせ」
「ああー」
「ものっそい寂しかってんけど」
「うん、ごめん。今ちょっと親に封印されてんの、楽器類」
「え、うそ。すずきくん進学するん」
「や……、うん」
「なんか今一瞬否定したよ?」
「うん、まあ……一応受けるけど、行くかどうかは決めてない、ていうか」
「うん」
「多分行かねー」
「ははは」

始業式のあとは夏休みの続きみたいだ。
来るかなと思って、待とうか待つまいか悩んでいたら、最後のひとりと入れ違いに彼はやってきた。
えへへと笑って待ってたと言った。

「このあとどうする、」
「ん、暇だよ」
「じゃ付き合って」
「うん。どっか行くの?」
「どっか行きたい?」
「……どこにも」
「うん?」
「行かないでね」
「……すずきくん。それこっちの台詞」

頑丈そうな肩に額をもたせる。
珍しくカッターシャツを着てる。
意外にも似合っていて綺麗だけど、今はなんだか脱がしてしまいたい。
うなじにキスしたいらしく窮屈に擦り寄ってくる彼の、髪が頬にふれた。

「さとうくん、やっぱ髪伸びたよ」
「えー」

ねえ、明日の朝まで夏休みにしよう。
今年の夏初めての約束をした。