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さらばしちはちくがつのなきがら

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ブルハ




あ、やばい、と思った。
邪魔にされた様々なものを、ブルドーザー式に詰め込んだような資料室は北向き。
ひやりと湿気てほの暗く、冬から春に変わるときの、曇天からさす遠慮がちな陽を思い出した。
つんと尖った鼻先、なんてことないふうに閉じられたくちびると顎、からあおのく喉元。
上に向かってのびる腕がまとう、張りつめたシャツの布地と張りつめた皮膚、
日を照り返す白さと日に当たらない白さ。
直線に奇妙な融合をはたす曲線、それは女子のやわらかなそれとは全く違うもので、強靭なばねのような、成長期の。
瞬間、強烈にエロを感じた。
その腰を抱き寄せるためにごく自然に、腕が動きそうになった。
あ、やばい。
反射的に首をうつむくと、細い後ろつきの腰、折れたシャツのすそが目に入った。

「……みどりくん」
「何、」
「すそ上がってるよ」
「へえ」
「へえって」
「なおしてよ」
「……え!」
「つうかさ、取ってよ眺めてないで。たまくんのが背たかいんだから」

背伸びをあきらめて、造り付けの棚の上段を指さした目に見つめられる。
ガイジンめいて豪勢なつくり。

「何」
「え、いや、別に」
「…………、」
「ここスケッチブックばっかだよ、ファイルだったらこっちじゃん?」
「……うん」
「あ、これかも」
「あった?」
「んん、多分」
「たまくん、悪いんだけど」
「うん、うわ」

爪先立ったままシャツの裾を、強く引かれて派手によろめく。
受け止められようはずもない彼の腕に受け止められる。
勢いはそこでたゆんで、そのままゆっくりと床にたおれた。

「……う、っわ、ごめ」
「すそ」
「え、」
「なおしてよ」

せなを抱いていた彼の腕が、静かに落ちるのを見る。
日を照り返す白さと日に当たらない白さ。
ファイルからこぼれた楽譜の上で、彼はひっそりと笑った。