さらばしちはちくがつのなきがら
夜のプールサイド
水面に月、
水底に夜空を見る。
「いやちょっと、おい、ねえ。大丈夫なわけ?」
「んん、大丈夫」
「なんで。根拠は」
「おれ水泳部だから、忘れ物とりにきたとか言えば」
「……おまえ結構悪いねえ」
「そうちゃんほどじゃない」
「なんでだよ。俺夜のプールってどんなかなって言っただけじゃん」
「来ないの?」
「……行くけど、」
変なとこで大胆な幼馴染は、変なとこで優秀な運動能力を発揮してひといきにフェンスを越えた。
フェンスの向こうから小首を傾げるそいつ、の向こうから水の気配。
俺はどちらに誘われているのだろう。
「俺のせいなわけ?」
「そうだよ」
「うそだよ」
飛べる気がするのはおまえのせい。
作品名:さらばしちはちくがつのなきがら 作家名:むくお