さらばしちはちくがつのなきがら
肉
女の子の肉は甘いにちがいない。
よく泣くから、しょっぱいものは長いこと体のなかにいられないのである。
「ばかじゃねえの」
「ちょ、ひど!」
「コメントしてやっただけありがたいと思えよ。通常ポカーンだろ今の」
「何の話ー、」
「おー来たなおんなおっさんめが」
「すみれちゃあん。何か言ってやってよこの鬼畜に」
「はは。今に始まったことじゃなくない?」
「そうだけどさあ、」
「お昼どうすんの?」
「おれ弁当」
「あ、おれも」
「んじゃわたし買ってくる。みちるさんは?」
「早弁して購買」
「えー、またか。なんで見つかんないんだろうねあのひと」
「存在がシースルーだからな」
「なるほど。あ、そうだよしくん飴あげる。ほい」
「え、え、なんで?」
「んー、わたししょっぱい飴だめみたい。きょうちゃんにもらったんだけど」
「あ、そう……」
「すみれー」
「んー?」
「健康ヨーグルト買ってきてー」
「はいよー」
「……おれ、」
「ん?」
「この飴だけでおなかいっぱいになれるかも」
「ばかじゃねえの」
やっぱり、女の子の肉は甘いにちがいない。
作品名:さらばしちはちくがつのなきがら 作家名:むくお