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タクシーの運転手 第六回

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「あなたは、いいお父さんですね。働き者で」
 運転手は口を開いた。
「もっと、家族の方に頼ってもいいと思いますよ。1人で抱え込むことはないんですよ。家族は助け合うものです」
「う、は、はい」
 彼は鼻声になっていた。
「でも、無責任ですよ、あなた。子どもを養うために働かなきゃと言ってたのに、今は死のうとしている。まぁ、苦しいのは、話を聞いている限り、痛いほどよくわかりました。でも、これで終わりにはならないと思います。あなたはまだ若い、再起だってできるはずです」
「ぼ、僕に、本当にできるんでしょうか?」
「大丈夫です。そんな気負うことはないです。そんな急ぎ足で、人生を走ることはないんです。一歩一歩確実に歩くことのほうが大事です」
 運転手は、後ろを向いて言った。
「それに…」
「それに?」
 運転手は少し間を置いた。
「自殺するほどのエネルギーがあるなら、ちゃんと明日を生きてください」
「あ…」
「自殺するよりも、明日を生きるほうが全然楽ですよ。だって、怖くないですから。死ぬのは怖いです、誰でも」
 朝日の光が、車の中に差し込む。
「うっ、うっ、は、はい!ありがとうございます!」
 彼は、深く頭を下げた。