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 別に、相手が自分と言う普通のさして可愛くもない女の子だという所以外はおかしいとは思わない。自分も名前の書かれていない、不思議な手紙の相手に恋心のような感情を抱いたのだから。
 浜岡は続ける。
「何て言うか、気付いたら好きになってた。休み時間とか、君を見かけたら嬉しかった。ま、声は掛けられなかったけどさ。手紙を書いたのは、君の事を好きなヤツがいるんだって事を自覚してもらいたかっただけで、本当は告白なんてするつもりはなかったんだよ。だって話した事ない男にいきなり好きだなんて言われたら、気持ち悪いだろ?」
 そう言っていつもの優しい顔で笑う。
「夏にバスケの応援に君が来てるのを見つけた時、めちゃくちゃ嬉しかった。それで、どうしてもいつか話してみたいなって思って、図書室で見かけた時にたまらず声を掛けたんだ」
「そうだったんですか……でも、本当にどうして話した事もないのに、私なんか……」
 尋ねながら、美紗はどこかしら違和感を感じていた。
 それが何かは分からないのだが、京子に手紙の相手が浜岡ではないかと指摘された時から抱いていた違和感と同じものだ。
「いや、本当に俺にも分からない。でもさ、本を読んでる時の君の顔がすごく幸せそうで、その顔を見てたらこっちまで何だか幸せな気持ちになったんだ。バスケで上手く行かなかった時とか、ヘコんだ時とか、美紗ちゃんを見かけたら何故か落ち着いてたーーー多分君は知らないと思うけど、試験前に図書室で勉強してる君の斜め前とかに俺座ってたんだよ?」
 全く気付かなかった。
 誰かが座っているということは気付いても、それがどんな顔の人物かという所までは、知り合いでない限り記憶に留める事も無い。
 そんな風に思ってくれて、言葉にしてくれる浜岡の気持ちが嬉しかった。
「3年になってしばらくして、ああ、好きなんだなあって自覚してさ……美紗ちゃんは昔の童話っぽい本を良く読んでたみたいだったから、手紙に工夫をしてもらったんだ」
「ーーーしてもらった?」
 はたと顔を上げ、美紗は浜岡をやっと見つめる事が出来た。
「ラブレターなんて書いた事なかったし、美紗ちゃんとは話した事もなかったから、どうやったら気にしてもらえるかって友達と考えて……俺、文系だけど文章力って全然なくって、その友達が代筆してくれたんだ」
 違和感の正体が分かった。
作品名:deputy 作家名:迫タイラ