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しらとりごう
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novelistID. 21379
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ブローディア夏

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「まだ残ってる奴、いたんだな」

 石間は教卓に上半身を投げ出して、俺を上から見下ろした。ダルそう。

「石間たちはやけに賑やかだったな」
「あ、聞こえてた?」

 何故か石間は嬉しそうに寝返りをうつ。楽しかった会話なんかを思い出しているんだろう。

「木野はなにしてんの、ひとりで」
「ひとりで悪かったな」

「あっ。」

 嫌味が出た。

 石間は気付いていないのか、なんか落とした? なんて机の下を覗いたりして。

「もう夏休みだな」
「俺、休み中も図書室割り当てられてるんだ。最悪」

「図書室って休み中も開いてんの」
「地味にね」

 石間は海にでも行って焼いたりするのかな。
 俺はどうせ真っ赤に腫れるだけだから焼くのは諦めてる。年中白くて結構だ。

「木野」
「なに」

 図書委員の通信なんか書いて、誰か読む奴いるのか謎だ。
 鉛筆の線をサインペンでなぞりながら石間の声を聞く。水色の線はコピーしたら見えなくなるんだってさ。

「好きだ」

 石間の声は、低い。
 そんなんで好きだなんて言われたら、女の子は堪らないだろうな。

「木野、」
「あ、ごめん。なんか言った?」
「………。」

 あとは題名を清書すれば完成だ。
 顔を上げずに黙々と作業していたせいで、俺はやらかした。

「今なに考えてんだ、木野」
「えー? だから、そんな声で好きだとか言われてえなって考えて、……て……え、うわあ!」

 自分の発言にビビって、持っていたペンと定規をぶっ飛ばしてしまった。
 石間が、困ったように笑って、俯いた。引いたか。引くよな。なに俺、調子乗ってんだ。

「木野、まじ掴めねえ」

 だろうな。

「好きだ」

 吹き込まれた耳が、熱い。掴めないのは石間も同じだ。

作品名:ブローディア夏 作家名:しらとりごう