ブローディア夏
学祭の打ち上げは駅前のハンバーガーショップに決まった、とクラスのミニスカート軍団に言われた。
日曜日はそれぞれ仲のいいグループで集まりたいとのことで、クラス集合は今日の放課後。
「三好、行く?」
「行った方がいいんだろうなー」
一番仲の良い三好も俺も、面倒くさがり。
遊び人が3分の2を占めるこのクラスにおいて、その他3分の1の控え目な庶民は振り回されてばかりでうんざりしていた。
学祭盛り上がったね、と言われても、盛り上がったのは3分の2の奴等が悪ノリしたせいだろう。俺らはそれをヒヤヒヤしながら見て、右往左往していただけだ。
「でも俺は通り道だしな、しょうがねえか」
「まあ……適当にフケよ」
と言いつつ、適当にフケるのは主催に決まってんだよなとは心の中で吐いた。
三好はチャリがパンクして、やむなく不参加が決まる。
どうせいてもいなくても影響ないだろうし、俺もわざわざ行かずに帰ろうか。
それでも自転車を進めて心底途方に暮れていた俺の横で、バスが停まった。赤いラインのやつだから、やばいな、クラスの奴等が乗ってるかも。
「木野」
「あ、石間」
そうだよな。クラスの奴等は駅まで直行するか。
「なんでこんな所で降りたんだ?」
「木野が見えたから」
「やめろよ」
「悪い、ウソだ」
なんだよ、ウソって。
石間が爽やかな笑顔でうちわを扇ぐ。その風がわずかに俺の前髪を持ち上げた。
「俺んちこの奥なんだ。汗かいたし着替えてから行こうかと思ってさ」
「打ち上げ行くの」
「もちろん。…木野は行かねえの」
それこそもちろんだ。
「行くつもりだったけど三好も都合付かねえし、今日は帰ろうと思っていたところ」
「ふうん」
石間は俺の体の向きとは逆方向に歩きながら、手招きをした。
「木野」
「なに」
「俺もやめた。木野と遊ぶ」
「はあー?」
石間は、その、ほんとに俺のこと好きなのかもしれない。
なんて思うだけならタダだ。