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しらとりごう
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novelistID. 21379
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ブローディア夏

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「いいのか? そういうのって、犯罪とかじゃ」
「木野ってホント変わったところに突っ込むよな」

「だってそういうのってアメリカのコアな映画の中だけだと思ってたから」
「俺だって少女漫画の脇役が主役のサイドストーリーの中だけだと思ってたよ」

「なんだそれ、よくわからん」
「でも多分、犯罪ではないよ」

 石間が、俺と付き合わないか、とか言い出した。
 友達になれた実感が無いままに、次の段階に石間は俺を引きずり上げようとしていた。
 俺は石間と友達にはなりたくないと最近思っていた。でもいざ相手から席を差し出されて、尻込みした。これは完全に俺をからかってるんだろう。
 
 俺の視線に気付いていたのかも。

 だって、男同士じゃん。

「ネタにする気だろ」
「それは俺のセリフだ。告ってんのは俺だぞ」
「だって石間、友達腐るほどいるしモテるんじゃん。飽和状態じゃん」
「うん。」

「別に俺に構ってくれなくていいよ」
「…なんでそうなるんだ」
「わざわざ犯罪めいた恋愛することないと思うし」
「それって、俺フラれたっていうこと?」

 その問いには答えられなかった。
 だって、好きなんだから。

「木野、俺と付き合おう」

 俺は石間に、握手で返した。


 狭い部屋には早々布団を敷いて、夕飯前に一眠りする。
 石間と付き合うことになった。具体的にどうともしようがないけど。
 石間はバス通学で家は最低6キロは離れている。そもそも男同士だし、共通の友人は皆無。
 うん。そもそも男同士だし。俺はケータイ持ってないし。

「進二郎、電話!」
「あー」

 ウトウトのウの字もでてこなかった。

 俺にはコードレスの電話の仕組みが分からない。コキとか言ってみたかったりするし。
 今時珍しい黒電話を母さんから受け取って、取り敢えず名乗る……前に名前を呼ばれた。

『進二郎……』
「…え、誰、い、石間?」
『進二郎って言うんだ、木野』
「まあ」

 名前知らなかったのかよと言おうとして、初めての電話越しの会話に人知れず赤面した。
 石間は淡々と話す。用もないくせに、電話慣れしてるんだろうな。

『久しぶりに家電使ったし』
「そっか、まあ今時、ね」
『なんかカッケーな、お前の名前も、家電も』
「そうかな」
『だって"家族公認"、て感じで』
「それはちょっと違う気がするけど」

 からかわれているのかも。
 でも学校での会話を思い出す。
 "告ってんのは俺だぞ" だって。

『じゃ、明日な』
「ああ、またな」

 明日、また話せるのか。
 付き合うってのは、不思議な契約だ。

作品名:ブローディア夏 作家名:しらとりごう