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しらとりごう
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novelistID. 21379
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ブローディア夏

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木野--

 はあー……

 さっき9組の女の子から貰ってしまったサンドイッチの箱。
 机からそうっと取り出したけど、やっぱりグチャグチャになっていた。
 知らない子……ではなかったけど、受け取れないと言っても聞いてくれなくて、結局こうして食べている。
 ほんとはせっかくだから昼か、家に帰ってから食べるべきなんだろう。
 人前で自慢できるようなキャラではないし、なんか相手に申し訳ないし。
 でも、見られたくない人がいた。だからはやく無くしてしまいたいと思ったんだ。

 それなのに石間は当然のように3箱も貰って平然としていて。
 奇跡的に貰ったってな俺とは違い、当然なんだ。石間だもんな。

 でもおもしろくなかった。
 全然おもしろくなかったよ。

 最近、前まで当たり前だったことがどうしても我慢できなくなる。
 チャイムが鳴ったせいで石間とはろくに話すことなく別れてしまった。
 どう思ったんだろ。俺みたいにぐるぐると考えたりするんだろうか。

 俺は最後の一口をもそもそと口に入れて、教科書と資料集を鞄から引っ張り出した。

 石間が所属している茶髪の腰パン軍団はチャイムが鳴ると連立って、昼食の前に律義にも手を洗いにいく。
 今日も石間だけは机を移動させるのにもたついて、一人遅れて教室を出るようだ。

「石間」
「木野?」

 クラスでは俺から話しかけることはあまり、というかまずない。石間は少し驚いていたように見えた。
 さっきの時間に見られたくないところを見られてしまったのは誤算だが、昨日から考えていたことを実行することにした。
 さっきまで気になっていたミニスカ軍団も、大きなラメのポーチを持って何処かに行ってしまったし。三好もパン買いに行ったようだし。
 石間と俺の弁当箱と巾着が偶然にも同じものだと言うことは、大分前から気付いていたから。

「今日、弁当交換しようよ」
「えっ」
「ポテトサラダ好きだよな。今日入ってるから」
「ああ、あ、ちっと待って」

 それはいつ頃だったかな。石間が単に180cmに0.5cm足りないだけのクラスメイトに過ぎなかったころか、妙な意識をし始めてからのことか。

「なにしてるんだ」
「箸」

「箸?」
「あと俺のやつ白飯だからフリカケあった方が」
「そのまま交換するんじゃん」
「え?」


 どっちにしろ石間は俺となにかにつけて共犯になりたがる節があると思うんだ。
 こないだ返したTシャツのかわりじゃないけど、たまには俺から仕掛けてみようかなって思って、ああでも別に俺が作ったわけじゃないんだよなこの弁当……。

「んじゃイタダキマス」
「ああ…」

 石間は真っ赤だった。


作品名:ブローディア夏 作家名:しらとりごう