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しらとりごう
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novelistID. 21379
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ブローディア夏

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番外-しっと



石間--

「木野」
「あ、石間……」

 俺が今声をかけたというのに、木野は顔を背けてしまった。
 その隣りにいたクラスメイトが変な顔を木野に向けて、二人とも教室の中に消えていく。
 なんだよ。
 最近木野の様子がおかしい。話しかければ誰にでもそれなりの反応をみせるのが木野だろ。
 俺には『それ以上』でなきゃ、変じゃねえのか。

「あんらまー石間ってば」
「あ? なんだよ」

 いつもつるんでる仲間が口笛を吹いた。
 なんだよ、とは言ったが、きっと手に持ってるサンドイッチの箱のせいなのはわかっていた。
 色違いの、サンドイッチの箱が3つ。

「9組と10組だろ、調理実習だったトコ。豊漁だねい」
「らしいな。てか明日俺らだって嫌でも食えるんだけどね」
「まあそんなこと言ってん、嬉しいくせに」
「ほほほ。成長期ですからね」

 小声で話しながらチラッと見て、そういうお前こそ貰ってんじゃんか、と肘を打つ。
 ああ、青春だよな。

 ……木野さえこっち見て笑ってくれたらさあ……。

 昼飯まであと一時間過ごすために、さっき頂いたカツサンドをカッ食らった。最後の一箱には好物のポテトサラダが挟まっていたから、昼にとっておくことにして。

「木野」
「あ……」

 黒板が綺麗だったから、黒板前の席を陣取っている木野に近付く口実が見つからない。でも、そんなんいいやと話しかけた。
 そんなん、いいやと……

「あっ?」
「!」

 目が合った途端、バサリと音をたてて木野は何かを机に隠した。
 タイミングよく、ではない。俺に見せたらまずいものがあったんだ。
 嫌な予感がした。
 木野は何かを口に含んでいるようで、お茶のペットが机に乗ったままだ。

「なに……隠した?」

 隠したいなら隠したまんまでいいじゃんか。とも、なんで俺に見せない? とも思った。
 木野は俺と目を逸らしてもぞもぞと喋ったが、俺にはいやにはっきり聞こえてしまったのだった。

「……石間が貰ったのと同じやつだよ」

作品名:ブローディア夏 作家名:しらとりごう