ブローディア夏
(視線)
俺は最近真面目に授業を受けている、と教師たちから褒められるようになった。
木野、ありがとう。
窓側の一番うしろ。つまり一番眠くなる席は、俺の指定席。何度クジを引いても、2年生になってからはこの席以外に座ったことがないってのが自慢だったりする。
今度の席かえで木野が教卓の前の席になった。
真面目な優等生のくせに、髪の毛だけはかなり明るい色に染めてる他には特に目立つ所がない木野。それも俺以外に言わせると、だけどな。
自転車で登校する木野は、汗が蒸発して、髪が少しだけ持ち上がる。全く気にしていない所が男らしい。でも、なぜか茶髪なんだ。しかも伸びる気配もない。
以前の木野はドア側の一番うしろ、つまり一番風通しの良い場所にいた。俺の席より一段前にあるその席にいる木野は、それはそれでよかった。風に吹かれても乱れない程度に短い髪で、でも目にゴミが入らないように瞬きが増える。もちろん俺からは辛うじて睫毛の先が見えるだけなんだが、その睫毛に乗っかった風には揺れない前髪が、気付かないくらいに少しだけ上下したりする。
こんなに細かいパーツだけで一日中想っていられるなんて、木野相手じゃなきゃ有り得ない。気になって気になって、授業どころじゃねえ。
だから今日も俺はじっと黒板を見つめている振りをして、彼を見ている。
授業が終われば、黒板をゆっくり消しながら木野とどうでもいい話をする。
優等生のくせに茶髪のあいつを、俺はもっと知りたくて。
おわり。番外に続きます