ブローディア夏
「静かだな」
「まあ、騒がしいのも困るんじゃね」
思いを先に告白したのは俺でなく石間だったから、石間の住んでるS市の警察署にやってきた。
なんとなく学校に似ていた。違うのは土足で入れる事か。
「木野って図太いのかもな」
「石間こそ慣れたふうだけど」
石間が、廊下のベンチに座ってコーラのペットボトルを開けた。
口の端だけで笑うのって格好いい奴に与えられた特権な気がして、つい魅入ってしまう。
クリクリと髪を捻りながら、石間は皮肉っぽく言った。
「俺は常連さんだったから」
「じょうれん」
一口飲んだコーラを俺に突き出す。
そうか。盃を分けあって、遂に俺もトガビトになるってわけだ。
「住む世界が違うな」
「市が違うだけだろ」
「石間、もう警察に来るような事するな」
「あんだよ説教か」
「俺、石間と別れさせられるのは嫌だ」
前科ってばれるらしいじゃん。
ぽかんと開かれた口が閉じ、また端だけが持ち上がる。
俺たちは、共犯者だから。
「その時は一緒に逃げような」