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サイコシリアル [1]

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 夜九時五分前。
 骨が軋む程、静かな公園のベンチに僕は座っていた。結局僕は、この満天の星空の下で戯贈の話を聞く、というロマンチストになることを選択したのだ。
 話の内容は多分というか確実に、ロマンチックとは対極的な話になると思うけど。
 しかしながら、未だに現実味がない。実の妹である志那が殺されるなんて。
志那は三歳離れた中学一年生で、兄の僕とは違う、生まれながらの天才児である。
天才と言ってもスポーツの天才でもなく、勉学の天才でもない。人に好かれる、ということに長けているのだ。人に興味向けさせることに長けている。これも言い換えれば天才だ。
志那は、容姿にも恵まれている。愛嬌があり、親しみやすい。兄の僕とは対極的だ。恨まれる理由なんてない。いや、あるとしたらモテることに嫉妬した醜い同性からの恨みくらいだろう。
殺される理由なんてない。
現実味を帯びない理由の一つ。
他の理由としては、話が僕の過ごしてきた日常とかけ離れすぎている。
僕の過ごしてきた十五年間は、差別や侮蔑、苛めや辱しめ等は大小関係なくあったと思う。しかし、殺しともなれば話が違う。殺しに大小なんてないのだから。
僕の身の回りには殺人なんてなかった。
本当にテレビの世界だ。
ニュース越しに見る世界。
ニュース越しに知る出来事。
曖昧ながらも正確に抱く不快感。
そんなことが身近過ぎる程に身近な所で起きると言われても現実味が帯びない。
帯びて行くのは疑問とほんの少しの恐怖だけ。
僕はそこまで考え、公園に来る途中に自動販売機で買った炭酸飲料水を一気に飲み干した。
炭酸飲料水は喉の渇きを潤してくれるが、心の蟠りは晴らしてくれない。
だから、僕はここへ来た。
真実を見つけ、見つめる為に。
「あら、早いわね。約束の時間まで後三分程度あるのに。早目の行動は損することはない、と言うけれど場合によっては損をする可能性もあるから気をつけた方がいいわよ」
ベンチの後ろ、要するに死角というやつからタイミングを図ったかのように声をかけられた。
後ろを振り向くと、夜に淡く浮かび上がる白を基調とした服を着た戯贈が立っていた。
その表情は至って無表情。戯贈は基本的には無表情な人らしい。
楽しいこと、興味があることに直面すると、唇の端を嫌味たらしく吊り上げるだけである。僕自身、『環境適応能力』に長けている人間じゃなかったら気味悪がっているところだ。
でも、僕は戯贈の笑顔を見てみたいとも思う。
普段笑わない人が笑うと、可愛いとかではなく芸術になるのだから。
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし