サイコシリアル [1]
「でも、来てくれた━━ということは協力してくれると解釈してもいいのかしら? もし違うのであれば看過出来ないわね」
「協力する、と言うよりも話を聞きに来たといい方が正しいかな? 全容が見えない話を見えてるフリして受け入れるのは愚かな話だろ?」
僕は、戯贈にそう言いつつベンチに座れと促した。
「それもそうね」
戯贈はそう言い、僕の隣に腰かけた。
三人用のベンチ。二人の距離感は約三十センチ。近すぎず、遠すぎない絶妙な距離感だ。
「斬島猟木━━今回の対象が彼。勿論、知っているわよね?」
「うん」
━━斬島猟木
今、世間を賑わす連続殺人魔。
無差別に中学生の女の子ばかりを殺害する、世界最狂のロリコンであり屑である。
その殺害方法もまた残虐の一言に尽き、報道規制がかかる程だ。
名前を突き詰めても全容が突き止められない殺人魔、斬島猟木。サイコパスの極み斬島猟木。
こいつを逆に殺すって訳か?
無理難題にも程がある。
そして、僕が持っている斬島の情報で一つ引っ掛かる点がある。
「でも、斬島は無差別で女子中学生を狙っているんじゃないのか? 僕の妹は中学生だけど、一概に志那が狙われるとは限らないだろ?」
誰を殺すか分からない。 だから無差別なんだ。
「多分、答えは涙雫君の情報にあると思うわ。報道規制、この一言に尽きるのよ。警察もマスコミも『次は誰々さんが狙われます』なんて情報は流したりはしないでしょう?」
確かに言われてみれば、どんな連続殺人のニュースを見ていてもそんな情報は出てこない。
「真実と現実は決してイコールでは結ばれないのよ。虚実が現実になることもあれば、ならないこともある」
「じゃあ、何故戯贈はその情報を?」
「依頼主が国家だからよ。私は変な話、国家公認の殺し屋よ。彼らは私のことを『荒らし屋』とも呼ぶようだけども」
戯贈は、さも当たり前のように言った。挨拶を交わすよりも軽く言ってのけた。自分が馬鹿げたスケールの話をしているのに気づいていないのだろうか。
「国家って・・・・・・まぁ深くは突っ込まないよ。それにしても『荒らし屋』ってどういうことだ?」
「要するに中立ということよ。先から少しは考えたらどうなの? そのままだと脳細胞が壊死するわよ」
「言っておくが何人たりとも『荒らし』と『中立』がイコールで結ばれないことを僕は宣言したい」
すると戯贈は、少し苛立ちを見せながら僕に説明を始めた。
筋肉細胞が壊死と蘇生を繰り返すとホルモンバランスも崩れるのだろうか。
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし