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サイコシリアル [1]

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「あなたは、今の会話の中で気付くことが出来ないの? 死にたいの? いちいち私に説明させないでくれるかしら。非常に疲れるわ。そうね、端的に言わせてもらうわ。殺し屋出からに決まっているじゃない」
 殺し屋だから、らしい。
 生憎だが僕には、殺し屋萌えという物は持ち合わせていない。
「そう涙雫君が言うのであれば、何故私の名前を知っているのかしら。不思議だわ。あなたとの接点なんて無いに等しいのに」
「僕の趣味は人間観察だからね。一時の観察対象だったからかな」
「それはそれは美しい観察対象だったでしょうね」
自分で言いやがった。
確かにどこか儚げな雰囲気は持っているのだけれども、そこまで評価したくはない。
「ま、それはないでしょうね。私は、私のレベルを分かっているつもりよ」
僕のコンマ数秒で移り変わった引き笑いに気付いてか、気付いてないでか戯贈は、すぐに前言を撤回した。
しかしながら、依然と変わらず刃渡り二十センチ程のナイフを僕に押しつけたままだ。
いや、更に力が込められているのは気のせいだろうか。
ボタンの縫い目が切れ、僕の腹部に突き刺さるのは時間の問題だろう。
縫い目が切れる=命が切れる、なんてシビアな世界なんだろうと僕は痛感した。
「━━だってそうでしょう? さすがの私も、霞ヶ窪 桜には敵わないわ。容姿だけの話をすればだけれども。あの子は異常よ。どんな遺伝子が融合したら、あの完成度を出せるのかしら」
━━霞ヶ窪 桜
同じく朧気高校三年。成績は中の下。特筆すべきは、戯贈も言っていたその容姿だ。程良く艶がある黒髪に、愛くるしくぱっちりとした瞳・・・・・・というか、全てが整い過ぎた女性だ。可愛い系でもあり、綺麗系でもある絶妙なバランス。勿論、霞ヶ窪の夢はモデルもしくは女優だ。と言うよりも既にモデルなのだ。国内の若者に有名な。しかし、本人に言わせれば「目標は『国内のトップモデル』、夢は『世界のトップモデル』かな」らしい。
容姿端麗とは、まさに霞ヶ窪 桜が生まれて来るのに事前に用意された言葉だろう。
「殺してみたいものね」
 戯贈は、さらっといった。
 朝のあいさつよりも軽く、さらっと言ってのけた。
「戯贈の言葉に少し共感できる僕がいます!」
少しと言うのは、さすがに殺したいとまではいかないだけであって、僕も霞ヶ窪が━━嫌いだ。何よりも完璧すぎる。誰にでも笑顔を振りまき、親しげに話しかけて来るあいつが。人間は完璧すぎるほど、不完全なものはないというのに。霞ヶ窪はそれを分かっていない。
僕の独断と偏見だけど、何を言われようが嫌いだ。
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし