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サイコシリアル [1]

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「そういえば戯贈。さっき斬島に『永世中立』とか『巧』とか言われていたけど、どういうことだ? それに、戯贈は斬島のことを尋ね人とも称していたし」
何となくは想像がついたけど、こういう現状だ。詳しく聞いておくことに越したことはないだろう。
「そうね、知っておいた方がいいわね」
そして戯贈は続けた。
「この世界には殺し屋の組織が大きく分けて三つあるの。私が所属する中立を思想とする『永世中立』と呼ばれる組織。殺しが癖となった、『人心隔離』と呼ばれる組織、最後に、殺しに対して極端な思想持つ、例えば殺しを正当化、所謂、過激派組織、『過剰心理』の三つがね」
「ちょっと待て、殺し屋なのに中立ってどういうことだ?」
殺し━━に中立も何もないと思うのは僕だけだろうか。
中立的に殺すという意味が全くもって分からない。
「何て言ったらいいのかしら。そうね、涙雫君。この世に殺されていい人間っていると思う?」
戯贈は、意味深長に僕に問いただした。
「・・・・・・いない、と思う」
「それは綺麗事ね」
そう、綺麗事だ。
戯贈の言うことに間違いはない。
道徳の問題。
人道としての問題。
「だとすれば何故、人は人を殺してはいけないのかしら? 人間は沢山の生き物を殺すのに」
分からない。
そんな本質的な問いの答えなど僕の中にはありやしない。
「正義のヒーローだって時として人を殺すわ。大半の人間には善に思えるかもしれないけど、一握りの人間たちに取っては悪かもしれない。個人個人の価値観の差が生む違いね」
確かに戯贈の言っていることが的を得ているのは分かる。
正義のヒーローが悪を倒す。けれども視点を変えてみたら、その悪から見たら正義が悪で、悪が正義だ。
ただ大半の人間が正義のヒーローに共感するのは綺麗だから。綺麗事を並べているから。
そう言うことを言っているのだろう。
「だから私たちはね、中立の立場で考えるのよ。どちらの味方でもない第三者の立場でね。そして、殺すに値するか判断するの。殺すに値すれば殺すわ。でも値しなかったら殺さない」
もし、戯贈の言っていることがそうなのだとしたら。
「言い換えれば中立はとても自己中心的なのよ」
そういうことだ。
ある意味での独裁。
中立とは所詮綺麗事に過ぎないのだ。
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし