サイコシリアル [1]
「担任、僕、泣きそうです」
「本当に涙脆いな、涙雫は」
「担任、僕は犯罪に加担する度胸はない勇気もないですが・・・・・・見守ることは出来ます」
「はっはっはー、犯罪の容認は共犯と同意義だぞ、涙雫よ」
「法律の落とし穴め。 僕がその穴を埋めて見せます」
六法全書なんて僕が焼いて炭にして二酸化炭素に変えてやる。
地球温暖化の原因は僕だ、と掲げてやる。
「担任、僕には夢が出来ました。二酸化炭素になることです」
「涙雫、支離滅裂もいいところだ。それにそれは夢じゃなく野望に近いぞ」
僕に出来た夢がことごとく打ち砕かれた瞬間だった。
「担任、野望を持つ人は野暮ですよね」
「ダジャレか? 先生は無視という選択肢を取りたいと主張するぞ」
「僕はその選択肢を挙げていません」
「自己判断じゃダメなのか?」
「事後判断でお願いします」
「涙雫、会話が成立してないぞ」
「税率ですかぁ・・・・・・国の永遠の課題ですね」
僕は、消費税などしか払っていないが担任は多大な税金を払っているのだろう。
心底、可哀想な担任だ。
案の定、担任は「税率・・・・・・税率・・・・・・」と税率を無限ループしている。
彼もまた、税金に苛まされる被害者の一人なのだ。
「担任、僕には夢が出来ました。税金をなくすことです」
「それでよし!」
予想外に担任は声高らかに叫んだ。
そこで僕は、担任との会話にも飽きてきたので帰宅することにした。
勿論、自己判断で。
担任が「はは・・・・・・税金がなくなる日はそう遠くない」等と戯れ言を言っているうちに僕は職員室を抜け出した。
廊下に出ると、生徒たちは部活動や勉学に励んでいるのだろう。人一人として居なかった。
誰もいない空間、誰にも邪魔されない世界。
そう僕に錯覚させるほどの雰囲気。
でも僕は、この雰囲気が嫌いだ。陰鬱で憂鬱な気持ちにさせる。
僕は人肌が恋しいから。
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし