サイコシリアル [1]
「戯贈・・・・・・」
「野郎は黙ってろヨ。死にてぇのか? あ? だったら今すぐ解体してやろうか?」
斬島は僕が口を開いた瞬間、更に狂気じみた声をあげた。
今の斬島がキレる引き金は『野郎』つまり、この場合の僕らしい。
要するに僕もとい、男が喋るとキレる。
「おぉ、ごめんヨ。美少女ちゃん。そんなに怖がらないでおくれ。今すぐ切り刻んであげるから」
斬島は、僕の後ろでカタカタと体を震わせながら恐怖している志那に向けていった。
戯贈が会話しているせいで失念していたが、今、斬島が殺そうとしているのは他でもない。僕の妹。
志那だ。
今、斬島の目に映っているのは、僕でも、戯贈でもない、僕の後ろで震えている志那なんだ。
妹が狙われているというのに、兄である僕は何故暢気に事態を見守っているんだ。
いや、見守ってすらいない。見て守っていない。見ているだけだ。ただ自分なりの解釈を加えて傍観するだけの傍観者だ。
何か、志那の為に出来ることはないのか。
何か。
何か。
ないのか。
「ダメよ、涙雫君。落ち着きなさい。昨日言ったばかりじゃない。私が頭で、あなたが身体」
戯贈は僕の心情を察してか、それとも表情に出ていたのかは分からないが、小声で僕に言った。顔は、斬島を見据えたまま、人の心を落ち着かせるようなトーンで。
「でも、戯贈・・・・・・お前はただ罵っているだけじゃないか」
そう、戯贈ただ斬島を罵っているだけで、事態は一向に回復しない。
「焦ってはダメよ、涙雫君。言っておくけど、今の私たちに勝ち目はないのだから。皆無と言い換えてもいいわ」
「何でだよ」
「そうね、まず第一に私の体力が限界よ」
「ふざけんなよ!」
第一と言うか、それが全てだろうが。
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし