サイコシリアル [1]
「やぁ、今日は天気がいいね! 絶好の殺人日和だ」
数メートル先の男が急に愉快そうな大声を出した。
決定だ。
彼が斬島猟木。
彼が連続殺人魔。
あいつは確実に志那を狙っている。
「その肌を切り裂けばどんな色を出すんだろう。ははは、ねぇ、どんな色を出すんだい?」
斬島は、笑いながらも着々と距離を縮めてきている。
━━狂っている
あまりにも不意打ち過ぎて、思考が止まりかけているが、それだけは分かる。斬島猟木は、狂っている。
「逃げ回る肉、逃げ惑う肉、ひゃはっ」
そして、右手には農作業で使用しそうな、大きめの鉈。
「お兄ちゃん、あれ、誰?」
志那が後ろから心配そうに言ってきた。
僕には、かける言葉が見つからない。だって、あれは志那を狙っている殺人魔だとか、言えないじゃないか。言ったとしても、どうにかなるわけでもない。
「そうね、強いて言うのであれば連続殺人魔、斬島猟木よ」
口籠る僕変わりに、戯贈言った。
しかしながら、戯贈にそう言われても、志那はうまく理解できていない様子だった。理解できていないというよりは、訳が分からないと言う表情だった。何を言っているのだろう、という雰囲気。
「美少女は二次元よりも三次元がいいよネっ。だって、二次元は死なないからネ」
こちらを見ながら言う斬島は本当に愉快そうだ。
本当に斬島の考え方は常軌を逸している。
たったこれ程、話を聞いただけなのに、分かってしまう。
斬島という一個人には、善悪の区別がない。
いや、善と悪という概念がないとでも言うべきなのだろうか。概念がないから言っていることが分からない。
だから━━怖い。
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし