サイコシリアル [1]
2
「お兄ちゃん、珍しいね。一緒に出掛けたいなんて」
妹の志那がさぞかし疑問そうに聞いて来た。
「え? まぁな。夏休み初日だし、妹との絆を深めようと思ってな」
次の日、俺は早速妹にべったり、というか絶賛護衛中だ。
お兄ちゃん、珍しいね。一緒に出掛けようなんて」 妹の志那がさぞかし疑問そうに言った。
「まぁ、夏休み初日だしな。久しぶりに兄妹仲を深めようじゃないか」
そう、僕は早速妹から片時も離れないという作戦を実行していた。というよりも護衛かな?
「兄妹仲を深めるのはいいけど、近親相姦はダメだよ?」
「可愛い顔して何言ってるんだ!」
中学生一年生が何処でそんな言葉を覚えた。
教えた奴がいたとしたら僕はそいつを許さない。
「中学生のうちから語彙力を鍛えるということは、とてもいいことなのよ。早くから学習していないと、ただの愚鈍に育ってしまうものだから」
こちらは戯贈妄言。
午前十時から、その毒舌という独特の言い回しは絶好調だ。
僕が妹を守るという目的に対し、戯贈は斬島を殺すという絶対的目的がある。
だから戯贈もこの場にいるのだ。
戯贈が『殺し屋』だということは猿渡警部のおかげで理解出来たけど、未だに僕は、戯贈が『殺し屋』ということを実感出来ていないし、どのような『殺し屋』なのかも分かりかねている。
「で、お兄ちゃん。今日は勿論、全額お兄ちゃん持ちなんでしょ?」
志那が意地汚い笑顔を浮かべながら言った。
その言葉に僕は、ズボンのけつポケットに入れていた財布の中身をチェックした。
財布の中には、なけなしの諭吉さんが三枚。勿論、約一ヶ月ある夏休みの小遣い。無論、食費込みだ。
「ごめん、志那。野口さんが三枚しかないんだ」
結果、僕は嘘という選択肢を取った。
「諭吉さんが三枚でしょ?」
「何故それを!?」
「戯贈さんから聞いたの」
「戯贈てめぇ!」
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし