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サイコシリアル [1]

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「言っておくが、斬島猟木に待ち伏せや、張り込みは通用しない。彼は本当の狂気だからね。前に張り込みをしていた優唯一秀な部下が殺されたよ。狙われるはずだった女子中学生の前に俺の部下がね。それも女子中学生の前で、だ」
次第に猿渡警部の声のトーンが落ちていく。
気分が下がるというよりも、言葉に重さを加える為だろう。
重い話を更に重く、真実味を添えて。
あの戯贈も珍しく、黙って人の話を聞いている。
「いいかい? 斬島猟木の犯行に唯一共通している点としては『白日の下』『人目の付く所』だ。要するに今回の作戦は張り込みでも何でもない、ただ涙雫志那と行動を共にするだけだ。そうすれば、奴は自分の犯行を他人に見せびらかせようとやって来るはずだからね。言い換えれば、君が囮役だよ涙雫君」
囮役。
志那の為なら囮役にでも何にでもなってやろう。
気を張るんじゃない、いつ狙われてもいいように気を引き締めて。
「分かった」
これは頭で理解するものではない。頭で理解するのは戯贈に一任して、僕は戯贈の変わりに行動に移せばいいだけの話だ。
「もう一度確認しておこう。涙雫君、君は片時も涙雫志那から離れては行けない。家の中は別としてね。幸いにも明日から夏休みだ。こちらとしては都合がいいからね。俺は、絶えず君たちを尾行している。いいかい? これはA級の連続殺人魔の犯行だ。決してなめちゃいけない」
「━━分かった」
今の僕には数時間前の疑問など微塵もない。
ただ今の僕の中で蠢いている感情と言えば『志那を守る』ということだけ。兄として、家族として、そして、一人の男として━━守るだけだ。
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし