サイコシリアル [1]
「さてと、涙雫君に私的桃源郷を楽しんでもらった所で、本題に入るわよ」
戯贈は、本当に引き際というものを心得ている。
「本題というかこれからの予定ね」
これから━━というのは、連続殺人魔斬島猟木殺しのことだろう。
いや、志那を守る為の戦いか。
「斬島は本当に理由なき殺人という愚かな行為が好きみたいね。そして、警察に追われる、というスリルも味わっている。その証拠に現場には、被害者の血痕に自らの血を混ぜたり、何かしらの証拠を残しているみたいね。そして、今回は犯行予告を置いていった。それがこれよ」
戯贈はそう言いながら、方にかけた小さめの鞄から一枚の写真を取り出した。
「・・・・・・志那?」
その写真にはまんべんの笑みを浮かべた妹が写し出されていた。
「そう、涙雫志那。あなたの妹の写真が、被害者の遺体の上に置かれていたの」
中学一年生の純粋無垢な笑顔。
僕は斬島に対して殺意が沸いてきた。
僕の妹に手を出すなんて、許しはしない。
手を出さなくても、手を出そうと思った時点で許しはしない。
「置かれていたというよりも、遺体にナイフで串刺し状態にあった、という方が正しいのかしら」
純粋無垢な笑顔が傷付けられ歪んでいた。
「明らかな犯行予告でしょう?」
間違えれば、僕が斬島を殺しかねない。
「でも、いつ何処で犯行にうつるのは記されていない」
「それじゃ今も志那の命が危ないじゃないか!」
僕は思わず声を上げた。窮地に立たされると人は冷静ではいられなくなる。
しかし、戯贈は対極的で表情一つ変えずに説明を続けた。
「一概に今は大丈夫とは言えないのだけれど、斬島の犯行は全て白日の下、それも一目の付く所で行われているわ。明らかなサイコパス精神ね」
それを聞いて一先ずは安心したが、結局のところ焦りと憤りがぐちゃぐちゃに混ざり合っている。
「そういう訳だから涙雫君。これから私は、あなたの家で住み込み生活を始めるわ」
え?
住み込み?
一瞬でぐちゃぐちゃだった脳内キャンパスが、真っ白なキャンパスに改新された瞬間だった。
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし