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サイコシリアル [1]

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「真実荒らし、虚実荒らし、戯言荒らし、私は誰の味方でもない中立の殺し屋。真実をねじ曲げる時もあれば、虚実をねじ曲げる時もあるわ。単に人を殺すだけではなく追い詰めるの。全て言葉でね」
「要するに人を『殺す』のじゃなくて、真相や虚実を殺す殺し屋ってこと?」
「そ、そういうことよ」
結局、世界最大の矛盾女ってことだろう。
事件を真実通りに解決する時もあれば、虚実を押し通し、それを真実に変える時もある。
「話が逸れたから戻すわよ。今回の依頼は斬島の反犯行の阻止、そして殺すこと。肉体的にではなく言葉でね。依頼失敗=涙雫志那の死亡もしくは、良くて重傷ということよ。そして、私には行動に移すほどの力がない。だから、実の兄であるあなたに協力を煽っているのよ」
戯贈の言っていることは本当のことだろう。
何て言ったって僕の趣味は人間観察だ。
戯贈の目も口調も嘘は付いていない。誰だって嘘をつくときには何かが乱れるものだから。
もしくは、相当な訓練を乗り越えたもの。
戯贈が後者の人間だろうが、妹が狙われているという事実は虚実ではないだろう。
だから僕は、この非力で強気な少女に強力することに決めた。
楽しくもあり、怖くもあるこの状況に身を投じる僕もどうかと思うが、やはり戯贈には何処か惹かれるところがある。
まだ謎があるということがまた魅力的だと思う。
全てを知ることは興味がなくなることに等しいから。
「分かった。協力するよ」
僕は、短めに返事をした。
「あら、案外すんなり受け入れるのね。もう少し時間がかかると思ったのだけれど。本当に扱いやすいわね」
「ちょくちょく罵るなよ!」
話題の展開がいつも僕の文句じゃないか。
「私はね、サドみたいなの。力がないかわりに言葉責めというのが性に合うみたいね。涙雫君はどんな責め方が好みなの?」
戯贈は、そう言いながら距離間三十センチと絶妙に保たれていた距離を十センチに縮めた。
いや、体の距離間は十センチだが、戯贈の口と僕の右耳の距離間は約二センチ。
今にも触れてしまいそうな距離。
戯贈の呼吸のリズムが手に取るように分かる距離。 そのリズムに呼応するかのように鳥肌がそのレベルを上げていく。
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし