むべやまかぜを 2
「それはすりかえだよ。大事なのは、そういうことじゃなくて、想いの部分。一生懸命な、ひたむきな想い。何かを作りたいっていうまっすぐな気持。でも、三重野おっさんたちにはそれがかけらもないんだ。親会社の金流用して、自分たちはやりたい放題。私、思うよ。そんな薄汚い想いで作ってる作品で店の棚を占領しちゃいかんって。三重野のおっさん達のラインが作ってるソフトさえなければ、その棚に、真剣に作品と向き合ってる連中の作品が並ぶ可能性が出てくるじゃんか」
物書きヤクザは抑えた語調で、言葉を選んで語り続ける。
「ルサンチマン抱えたオタク崩れが手慰みで作るような作品。グラップラーから仕事恵んでもらってるシナリオライターはそれでいいのかもしんないよ。それで。ってか、金さえもらえりゃそれでいいんだろう。でも、私は違うよ。私はそんなのは嫌だよ。そんなの間違ってると思うもの。作品に対して真摯な気持になれない、なる意思もない、そんな奴が幅を利かせていては、その業界はいずれ破滅してしまうよ」
「だから、三重野のおっさんやチンピラ雨宮が私の作品見て、少々こたえたっていうんなら、それは、私にとっては万々歳。てめーら、ちったあ反省しろって。てめーら、作品をなんだと思ってやがるんだって。自分で作る作品に愛着もない、他人に対する作品への尊敬もない。『記録より記憶』なんて何拗けてんだって」
丸山花世は続ける。