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むべやまかぜを 2

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 「学園ものにしようと。そう考えているのですよ」
 「ふーん……」
 少女は三重野という男の顔を眺めている。
 「生徒達がどんどん死んでいく。呪いを受けて……」
 「呪い、ねえ……」
 「呪いを解く術は無くて、どんどん死んでいく……友人が、恋人が……むごたらしく死んでいく!」
 三重野は楽しげである。普通、人が死んでいくのは悲しいこと。だが、この男にはそれが楽しくて仕方がないようである。三重野は自分が死ぬときもそのように嬉々としているのだろうか?
 「……で?」
 丸山花世は尋ねた。
 「ですから、そういう話にしてくれとね、そういうことなんですよ」
 「売るの僕だから?」
 物書きヤクザは退屈そうに言った。
 「……」
 三重野は沈黙している。
 「ただ人が死んでくだけでは、話として成り立たないよ。だって、現実に、この世界ではこの瞬間も人は死んでいくわけでさ。だいたい、そういうのを面白く読む人っているのかな?」
 「それを書くのが丸山さんなわけで……」
 三重野は言った。
 「原案としてですね、そうやって、呪いで死んでいくというコンセプトがあって、それを何とか丸山さんにお願いしたいわけですよ」
 「……」
 苦労は人任せ。使う金は会社のもの。どこまでも他人を頼る。けれど、名声は欲しい。でも……そんなに世の中は甘くない。
 「……ええと……高原さんがですね、なんか、悪魔とか、そういうのを出して欲しいというそういう要望がありまして」
 それまで黙っていた神田が口を挟んだ。
 「悪魔、ねえ……」
 自分は休み、おかしな指示だけは残していく。けれど、丸山花世は頷いた。
 「そうなんです、高原もそのようなことを言っていまして……」
 三重野が慌てて付け足した。全てがやっつけ。全てが泥縄。けれど丸山花世は怒らない。
 「悪魔を出すのね。ふーん。分かった。で、呪いで、どんどん死んでいく……そういうシナリオにすればいいのね」
 「そうなんですよ」
 「それから……携帯電話を使ってくれって、そういうことも……」
 神田が言い、丸山花世は聞いた。
 「携帯電話? なんで? それも高原のおっさん?」
 「いや、それは、僕ですね」
 三重野が目を輝かせて言った。
 「あんたか……」
作品名:むべやまかぜを 2 作家名:黄支亮