むべやまかぜを 2
ぱっとしない連中の総登場である。もっとも、花世は風体と才能が別物だということを知っていたので、それほどの落胆は無い。そしてヒゲダヌキが意気揚々として言った。
「彼らがね、うちの精鋭です!」
前向きな明るさ。物事を常にポジティブに捉える営業殿のことを花世は鬱陶しく思っている。
――自分のところのスタッフを精鋭って……あんた少しは謙遜ってものを知りなさいよ。
「ええとですね、こちらから高原……」
まずはハゲ。年のころは四十近い。長く生きてきただけあって、この男は多少は話ができる……のか?
「長くエロゲー業界にいてね、うちのディレクターなんでよね」
「どうもー、高原ですー」
高原は関西の人間なのか、ちょっと言葉に訛りがあった。お調子者ではあるが悪い人間ではない。と、思いたい。
「はー、そうですか」
花世は相手の様子をよく見ている。
「それからその向こうが雨宮……」
筋肉質な体にタンクトップ。ロッカー風の男。どことなくつっぱって、いきがったような雰囲気を持った人物はただ頭を下げただけであった。
「彼はですね、うちでグラフィッカーをしているんですよね」
「ふーん。そうなんですか」
丸山花世はグラフィッカー雨宮のことを観察している。
「……」
内面のその奥の奥。
――このニーちゃん、ゲイなんじゃないかな?
態度。物腰。服装。かもし出す雰囲気。オカマではなくてゲイ。あるいはバイセクシャル。丸山花世の目は鋭敏に相手の本質を捉えている。
――風体とか雰囲気とか。オカマじゃなくてゲイ。筋肉ホモ。
もっとも……ゲイだろうがなんだろうが相手の性癖によって丸山花世が相手との付き合い方を変えるということもない。相手が優れた作り手であれば尊敬する。相手が勇敢な作り手であれば敬愛する。そして、相手が無能な作り手であってもそれはそれと許す。ただ卑怯な作り手、無責任であったり、真心のない相手はこれを軽蔑し罵倒する。ただそれだけのことである。
「それでね、最後が神田君。こちらもディレクターです」
「……どうも」
線の細い眼鏡の若者はぼそぼそと言った。そこで丸山が切り返した。
「丸山です。WCAに所属しています」
「……」