笑顔の拒絶[Fantastic Fantasia]
「ここか」
レンは呟く。高台の裏の森の中の社。史間に渡された紙に書かれていた場所だ。書かれていたと言っても地図でも地名でも無く単語の羅列だったが、それは何とかした。導き出された場所は思ったよりもずっと近かった。
「お待ちしておりました」
何時の間にかいた青年にやっぱりというような顔をレンは向ける。
「いやだなぁ僕だって史間未無には違いないのに」
「決定的に違うだろ。で?」
青年はレンの様子を見て小さく咳払いをすると真面目な顔になる。
「あれを運びたい」
青年が指示した先には社の土台に半分使われている石棺が在った。
「ただしあれをそのまま抜くと崩れるので替わりになるものが要る。それを僕では見つけられない。だが時間も無い」
「そう、あんたや金色が感じ取った様にね」
甘い、甘い匂いがする。但し少し熟れ過ぎている。どちらにしろ人を惑わす匂いだ。
「崩しちまえよ」
レンは社に近付く。ぱりぱりと音がして幾体かの金色が散った。
「扱いきれないなら時間に流しちまえばいい。自分が拾えなくても誰か拾ってくれる。誰も拾わないならそのうち分解されんだろ。自分は新しいのを探せばいいさ」
レンは石棺に手を掛け力任せに引き抜くと、御神木が真っ二つに割れ雷が落ちたような衝撃を辺りに撒き散らした。辺りを満たす硝煙の様な甘い甘い残り香はすぐに風が散らしていく。レンが振り返ると青年は居なくなっていた。
作品名:笑顔の拒絶[Fantastic Fantasia] 作家名:幻夜